ボディガードは不要です3【沖矢昴】【安室透】 (ページ28)

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私の左手は彼の右手と深く指を絡ませたまま、昴さんは空いている左手で私の右手の甲を掴むと、自分の首へと誘(いざな)った。

私の甲を掴んだまま、いつものハイネックを彼の指先が下ろしていくのを、私は視線でも追う。そこに隠されていたのは、黒のチョーカー。

いつも細められている彼の瞳は、今は開かれていて――美しい緑色であることを微塵も隠してはいなかった。私は彼の首から視線が離せず、ただただ息をつめて成り行きを見守るほかなくて、指先を絡めた左手は緊張のあまり強張っている。

昴さんはふわりと微笑むと、カチャと小さな音を立ててチョーカーを外した。今は私の方が彼の手を掴んでいる。

ドキドキと心臓の音がやけにうるさくて、部屋の静けさで耳が痛い。

「――君が、受け入れてくれるといいのだが」

昴さんは――いつもとはまるで違う、魅惑的に甘く響く低い声でそういうと私の手を外し、眼鏡をはずす。

「そんなに見つめられたら照れるな――」

そういうと私を腕の中に抱き寄せた。そうしてほんの少し時間が過ぎた後再び私を至近距離で覗き込んだ彼の顔は、赤井秀一に変わっていた。

やっぱりそうだったと思う気持ちと、信じられないという驚きが交差して言葉にならない。

元日、病室で会った時の怖い印象とはまるで違って、赤井さんはふわりとその顔に親しみを込めた笑みを浮かべると「そんな顔をするな――」と言い、勝手にあふれる私の涙をその指先でそっと拭った。