ボディガードは不要です3【沖矢昴】【安室透】 (ページ16)

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unhappy end8 ページ16

カラオケボックスから出た私は、すっかり昼ご飯を食べ損ねたことに気づく。
でも、もう一回百貨店に戻る気にもならないしな――。

梅雨の中休みなのか、今日は天気が悪くはない。

華絵のトランクを引きずりながら、見るともなしに通りの向こうの百貨店の入り口を見た。

――赤井さん？

黒づくめの服を身にまとった赤井さんが、人ごみの中にいた。

左の頬に火傷のあとがある。

近づいたらダメな人。私は目をそらして向こう側には渡らないと決める。

「A？」

数歩進んだところで、後ろから手を掴まれた。

――赤井、さん？

さっき、通りの向こうにいなかった？
私は後ろを振り向いて息をのむ。

左頬に火傷の跡がある、赤井さんがそこにいた。

心臓が煩い。
でも、私は昴さんの言葉を信じる。

この人は本物の赤井さんじゃ、ない――と自分に言い聞かせた。

「どなたですか？」

「俺のこと、忘れたのか？」

私は試されているんだろうか。
それとも、本当の亡霊――？

「あなたは、私のことを知っているんですか？」

「江戸川A。
　幼少期、父親は弟の代わりに誤射された」

――赤井さんがそんなこと知っているとは思えない。知っていたとしてもわざわざ本人確認時に、それを私に言うようなデリカシーのない人ではないと思う。

銃の話は苦手だ。右腕が、急に痛みはじめる。