Liar1 ページ27
Liar(ライアー):嘘つき
本日の最終講義が終わり、研究室に戻る前に自動販売機で缶コーヒーを買った。
だって先輩は今日も首周りの詰まった服を着ているから、絶対に暑いと思うんだよねー―。
そろそろ服装を変えればいいのに、と思うが、相変わらず長袖シャツを羽織っている私も似たようなものなのかもしれない。
お金を入れながら、なんとなくにぎやかだなと思うスペースに目をやると、沖矢先輩がものすごく女の子たちに声をかけられている。
だよね、誰だってあんな素敵な人放っておかないよね。
これまで、誰もが声をかけなかったのはなんとなく声をかけづらいと思っていたからで――。
何故か、勝手に心臓がぎゅっと切ない音を立てたけれど気づかないことにする。
「Aさん」
ごとんと音を立てて出てきた缶コーヒーを取っている私の左腕を掴まれた。
「先輩」
「迎えに来ました」
穏やかな笑顔で紡ぎだされる言葉は、本当なのだろうか。
「あ――ありがとうございます。これ、先輩にと思って。これから何か研究するなら手伝いますよ？」
「わざわざいいのに。ありがとうございます。
今日はもう帰ろうと思っていました。
片付けだけしておきたいので、研究室についてきてもらえますか？」
ああ、突き刺さる視線が痛い。
先輩は彼女が欲しいとは思わないのかな。
先輩なんて素敵な人よりどりみどりなんだから、私みたいに恋愛に過度な不安感を抱く面倒な女に係るのはやめておけばいいのに、と、少し思う。
でも、だからといっていまさらやめられたらやはり淋しいかもしれない――。
複雑でわがままな気持ちに、我ながら泣きたくなってきた。
そんなことを考えていたら、先輩がぎゅっと私の手を掴んできた。
その手を思わず握り返してしまったのは、どうしてなんだろう――
自分の行為に驚いて見上げると、ふわりと笑みを浮かべている。
「もしかして、妬いてくれてます？」
「――気のせいです」
私がちっとも素直じゃないことなんて、先輩はきっとお見通しだ。
降り注がれる優しいまなざしに私は、そんなことを思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 346人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まつり(プロフ) - byate959さん» リクエスト、ありがとうございます。本編（沖矢さんルート）終了後、番外編で分岐点までさかのぼり、安室さんルート書ければと思っていますー！まずは本編頑張りますね。 (2022年6月15日 10時) (
レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
byate959(プロフ) - 沖矢さんルートが終わったら、どこかのタイミングで安室さんルートが読みたいです。どちらのルートもありで (2022年6月15日 9時) (レス) @page38 id: 8b6f74a7e0 (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - ゆうらさん» 応援ありがとうございます！沖矢さんルートで書きますね。更新、頑張ります。 (2022年6月14日 11時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - ぽむさん» ありがとうございます！今回は沖矢さんルートで書かせていただきます！ (2022年6月14日 11時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - 黒杏さん» はじめまして。気に入っていただいて本当に嬉しいです。沖矢さんルートで書きますね！ (2022年6月14日 11時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まつり
| 作成日時：2022年6月8日 8時
