ボディガードは不要です2【安室透】【沖矢昴】

鬼雨5―安室side― ページ11

安室side

名探偵の条件は一つではない。

優れた観察力や洞察力
場合によっては、運動神経の良さも譲れないことの1つといえる。

しかし、何にもまして「事件に巻き込まれやすいかどうか」というのが欠かせないのではないだろうか。

どんな事件にも首を突っ込み自ら事件を探し出す江戸川コナンはともかくとして、事件に興味がなさそうなのに気づけば数多くの事件に巻き込まれている「毛利小五郎」は、そういう意味では探偵としての資質を備えていると言えた。


――とはいえ。

いつもよりスピーディーに片づけを終えた僕は、自分が盛った睡眠薬を口にしたせいで眠っているAさんを見てため息をつく。

一般人として生きるなら、その才能は不要、むしろ邪魔でしかないというのに、今日も今日とてひったくりの被害にあったのは何故だろう……。

ひったくり犯は自分の足を引っかけて転ばせたうえ、荷物を奪い取った。風見が駅でAさんを見つけたと連絡してくれていた最中の出来事でタイミングが良かったのが不幸中の幸いだった。そのあとは警察でなく公安が身柄を確保したので、今は取り調べの最中のはず。


確かに、米花町の治安はよくないが、ひったくりが日常的に起きているというわけではない。




今年の正月、New Year Partyで起きた例の組織が絡んだ狙撃事件。Aさんは、偶然その会場にいた一般人だと思われるのに、被害者以外に唯一狙撃された――。しかも、かすり傷程度の浅い傷ですんでいる。その理由はいまだ不明。

あの船での狙撃者がジンであることはほぼ間違いないわけで、あいつが気まぐれに一般人を巻き込むとは思えない。ましてや「わざと弾を外す」なんて考えられるわけがない。

警告か、脅しか――

――そこには何かしらの意図があると考えた方が自然だ。


FBIがいち早く彼女の病室に駆け付けたのだって、おそらく公安(こちら)と同じ理由。


しかし、いまだに何も見つからない。彼女の周りからFBIが早々に手を引いたのは、やはり根拠がないと踏んだのだろう。

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