196グラム ページ7
しかしさすが、社内の色々なことを見聞きしている受付嬢。
対応にそつがない。
「ご馳走様ですー。あ、そう言えば一昨日、社長が次に専務が出社されたら連絡欲しいって言われてました。急ぎじゃないけど相談したいことがあるみたいで」
社長は電話を使わなかった。
しかも、メモでもなくあえて田中さんに直接伝言をさせている。
ことの秘匿さにちょっと緊張したけれど、何も気が付かないふりで笑って見せる。
「わかったわ、伝言、ありがとう」
私は田中さんと一緒に自分の部屋を後にする。
「ねぇ、久々に合コンしたいんだけどメンバー集められない?5人くらい。相手は20代前半のお堅い職業の人たちよ。うちの会社のOLが良いんだけど。日時は合わせてくれるって。できるだけ早めがいいの。ライン頂戴?」
――え、と、田中さんの瞳が驚きで丸くなる。
直後やれやれ、と、苦笑を浮かべた。
「わかりました。――本当、ご自身も周りも、どんなにグレードアップしても変わらないのすごいですね」
「私の原点は合コンなの。多分、沖矢さん聞きつけたら参加するって言うと思うから念のため1席あけておいて。来なかったらその分も私が持つわ」
「ハイハイ。もしかしてそうやって焦らすところまで作戦ですか?そんなことしなくても、沖矢さんは十分蘇芳さんに夢中に見えますけど」
なんて、田中さんは笑う。
本当にそうだといいけれど、実際はそんな風に私が上位に立てることなんてない。
私は部屋に戻ると不在の間に届いていた書類とメールに目を通す。
昴さんは誰かと――おそらくジェイムズと――通話中だった。
「もちろん、バレるようなへまはしません。ありがとうございます」
と、電話を切った。
「ね、何の話?」
「社長の話に私が同行できるかどうか上司に確認したまでですよ」
昴さんも手の込んだ伝言方法には、何か感じる所があったのだろう。
「ちょ、ダメだからね? 昴さんとFBIの関係を匂わせるようなことしちゃ」
「ええ、わかってますよ。今回は、MI6経由で話をつけてもらう段取りを付けました」
私はぎょっとした。MI6とは別方向で調査したいからわざわざ15歳で渡米してFBIに入ったはずなのに――。
その上、メアリーが許可するなんてよほどのことだ。
――まあ、よほどのことがなければ自分の息子に「薬で子どもにさせられた現実」を教えるような人でもなさそうだもんね。
事態のひっ迫感に息が詰まる思いがした。
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まつり(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます!あれもこれも書きたくてなかなか完結しないのですが、のんびり読んでいただけると嬉しいです。 (12月11日 21時) (レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - いつも楽しく拝見させていただいています!大変だと思いますがご自身のペースで続けて欲しいです!まつりさんの作るシーリーズ大好きです!!これからも頑張って下さい!応援しております。 (12月11日 18時) (レス) @page1 id: 933da0752b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2023年6月15日 16時