239グラム ページ50
寝室の扉を開けた途端、美味しそうな香りが立ち込めていて驚いた。
ソファでは沖矢昴の姿のまま、シュウがまどろんでいる。
きっと早めに帰ってご飯だけ作って、寝落ちちゃったんだ。
物音で目を覚ました彼はこちらを見て困ったように微笑を浮かべるから、私は零の手を掴んでリビングを横切り、ソファまで歩いた。
クリスマスツリーのせいか、ソファがいつも以上に闇色に見える。
「昨日はその――」
まだ、沖矢昴の声のままだ。
零に見下ろされたくないからか、私がたちが近づくと同時に反射的に立ち上がった昴さんに私はそのまま抱き着いた。
「ちょ……っA」
手を放して欲しそうな零の不満な声には気づかないふりをする。
だって、伝えるなら今しかない。
「2人とも、私のこと、何にもわかってない」
家族が亡くなって以降、他人に依存しないように生きてきたのに。それを崩したくせに。
こんなに信頼させた挙句急に居なくなるのはもう、辞めにして欲しい。
「どっちか一人だけ居てくれたらそれでいいってわけじゃないんだからね」
2人とも居てくれないと、落ち着かない。
2人ともうちに居てくれた時が、私は一番幸せだ。
「忙しいのは分かってるし、外では素顔で居られないのはわかってる。
四六時中ずっと傍にいて欲しいなんて我儘いわないけど、勝手に急に居なくなったりしないで」
――私はもう二度と、好きな人を簡単に失いたくないし、シュウと零のことはもうそのくらいどうしようもないくらい、大好きなの。
「――すまない。俺の配慮不足だった――次は気を付ける」
シュウの大きな指が私の頬を拭ってはじめて、泣いていることに気が付いた。
零の手が私の背中を優しく撫でる。
「他にどうしようもなかったのは、わかってる――」
だから電話して抗議なんてしなかった。
分かってる、けど。
また消えちゃうんじゃないかって。
本当に怖かったんだからね。
自分が泣いていると自覚したからか、そのまま抱きしめられるに任せてシュウの――いまだ沖矢昴の姿をしているその人の胸の中に顔を埋めて声を上げて泣く。
そんな子供みたいな私を非難することもなく、零まで頭を撫でてくれていることがただただとても嬉しかった。
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皆様のおかげで、続きます。いつもありがとう❤
恋人の愛はとても重たい6【愛され/逆ハー】
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まつり(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます!あれもこれも書きたくてなかなか完結しないのですが、のんびり読んでいただけると嬉しいです。 (12月11日 21時) (レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - いつも楽しく拝見させていただいています!大変だと思いますがご自身のペースで続けて欲しいです!まつりさんの作るシーリーズ大好きです!!これからも頑張って下さい!応援しております。 (12月11日 18時) (レス) @page1 id: 933da0752b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2023年6月15日 16時