238グラム ページ49
翌日、私が目覚めたとき隣でまだ零が眠っていた。
もちろん、昨夜眠りにつく前に「たまには一緒に起きたい」って強請ったせいではあるけれど、それでも、私の隣でこうして安心しきって眠ってくれているのがとても嬉しかった。
しばらく身じろぎ一つせず彼の顔を眺めていた。
沈黙に飽きたのか、ふふと、先に極緩やかに口角をあげたのは零の方だった。
いつ目を覚ましたのかわからなかった。
安心した私は、柔らかい蜂蜜色の髪の毛をそっと撫でる。
眠っている時に触れたらきっと、敏感な彼はすぐに目覚めるに違いないから我慢してたんだけど。
あんまり意味がなかったのかもしれない。
後少し、と、言わんばかりに安心しきった様子ですり寄ってくる零をぎゅっと抱きしめる。
こんな関係になるまではどこか近づきがたい雰囲気を纏っていた。
人並み以上に家事ができて、面倒見の良いお兄さんが、こんなにいろんな重責やしがらみを背負っていたなんて知らなかった。
シュウを巻き込んで歪な――それでいてきちんと愛の通った――関係を築けてようやく少しでも零が安堵できる場所が作れたなら、良かったなと思う。
唇を重ねているとようやく零が薄く瞳を開いた。互いの頭を、背を、肌を撫で合う。
昨夜若干無理をさせたのは多分私の方だ。
だって甘えて何もかも忘れるにはそれが丁度良かったから。
「零、疲れた?」
「君ほどじゃないし、もう平気だ。今日はこのまま寝て過ごす?」
「ううん、起きる。零は午後からポアロだよね」
「そう――何か朝ごはんでも――この時間ならもうブランチかな」
世の中の人たちはもうとっくに動き出している。
ぐう、と私のお腹が鳴ったのが2人が起きる合図になった。
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まつり(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます!あれもこれも書きたくてなかなか完結しないのですが、のんびり読んでいただけると嬉しいです。 (12月11日 21時) (レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - いつも楽しく拝見させていただいています!大変だと思いますがご自身のペースで続けて欲しいです!まつりさんの作るシーリーズ大好きです!!これからも頑張って下さい!応援しております。 (12月11日 18時) (レス) @page1 id: 933da0752b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2023年6月15日 16時