236グラム ページ47
「君には、紅茶じゃなくてハーブティーの方が良かったようだな」と、シュウの口調で呟き立ち上がる。
かちりと音を鳴らして、変声器をオフにした。
「そもそも、君が期待するほどの護衛はできないと思うぞ。怪盗キッドの護衛を、大々的にFBIがやったら国際問題だ。
怪盗キッドが狙うパンドラを辿っていたらZ社の日本の子会社に勤めるウダに辿り着いたんだろう?そして、そいつは公安でカラスダと言う名前を使っている」
なるほど「鴉」は【ウ】とも読める。
私が探していた公安のウダは、さっきみたカラスダで――。
キッド君も追いかけている、ということなのか。
キッド君は一人でそんなところに辿り着いたの?
「あんた、Z社のことまで知ってんのかよ――何も分かってないってことはないか、さすがに」
キッド君は驚いた顔をして、肩をすくめて座り直す。
「公安の中で、ウダって名前とカラスダって名前も使い分けてたけれど」
「公安は横のつながりが希薄だからな。それを利用して、場所によって名前を変えているんだろう。あるいは名乗る時はカラスダ、――漢字を読むだけの相手にはウダと読めるように細工をしているのかもしれん」
私の疑問に答えると、昴さんは自分も座り直し、煙草を咥えて火を付けた。
もはや彼は沖矢昴というよりも、赤井秀一だ。
「君の仕事の邪魔をしないから答えてくれないか。
何を目的にウダのことを追いかけてるんだ。怪盗キッド」
はあ、とため息をついた彼女は、ぽんっと手を叩きそのまま高校生の姿になった。
素顔のカイト君だ。
「パンドラに辿り着きたくて追っかけてるに決まってんだろ。
大阪城で行うニューイヤーパーティーで複数のビッグジュエルをお披露目するって言ってっからその情報を探っている」
「わかっているだろうが、それはキッドに対する盛大な罠だ」
「だろうな。だからといって見過ごすわけにもいかねーだろ。
それに、怪盗キッドの正体は女性だと思われた方が気が楽だ。油断するかもしれねーし?」
けけけ、とカイト君が愉快そうに笑う。
私と昴さんは顔を見合わせて肩をすくめるほかなかった。
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まつり(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます!あれもこれも書きたくてなかなか完結しないのですが、のんびり読んでいただけると嬉しいです。 (12月11日 21時) (レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - いつも楽しく拝見させていただいています!大変だと思いますがご自身のペースで続けて欲しいです!まつりさんの作るシーリーズ大好きです!!これからも頑張って下さい!応援しております。 (12月11日 18時) (レス) @page1 id: 933da0752b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2023年6月15日 16時