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232グラム ページ43

怖い。
ドクンドクンと心臓が煩い。

空手の要領で相手を投げ飛ばそうとしてもびくともしない。

「騒がないで、おねーさん。
 お互い困ったことになるわよ?」

耳元で囁かれたのはキッド君の声で――。
一気に力が抜けてしまった。

「おっと。本当、こんな隙だらけでアイツを尾行なんてしないで。
 昴さんもよくこんな無防備な子を野放しにしてるなぁ。

 俺ならおねーさんをこんなことに巻き込まないよ?」

私がへたり込まないよう抱き留めている人を煽り見れば、ホテルで何度か見かけた女性の格好をしていた。

「もう、驚かせないでよ」

「それはこっちの台詞だよ。
 なんでウダのことを追いかけてるの? あいつは危険な男だ」

「――今、なんて言った?」

「ウダだよ、ウダ」

「カラスダじゃなくて?」

「まあそう読めなくもないが。
 あえて違う読みをさせてんじゃね? 偽名作るより楽だしさ」

と言いながら、片手で器用にスマホを触っている。

「――ああ、昴さん? 俺俺。
 詐欺じゃないって。
 不意打ちで俺にたっぷり可愛がられたおねーさんの腰が抜けちゃったから迎えに来てあげて?」

受話器の向こうから、怒鳴り声が聞こえてきた。
もはや沖矢昴の口調ではない。

「――ちょ、耳元で叫ぶなよ。煩い」キッド君は電話を切った後独り言ちるとくしゃくしゃと私の頭を撫でた。

「おねーさんは自分で思っているよりずっと隙があるんだから、余計なことに首を突っ込まないの、分かった?」

見た目年上の仕事できそうなお姉さんだけど中身は高校生に思い切り説教されている。

「もしかして君の仕事の邪魔をしたのかな?」

「キス一回でチャラにしてあげるわよ。特別大サービス」

ふふっと妖艶なおねーさんになって微笑むのはやめてほしい。

――断り切れずにほっぺにちゅうしようかな、と覚悟を決めたタイミングで昴さんがかけつけて、私をキッドから引き離してくれた。

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まつり(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます!あれもこれも書きたくてなかなか完結しないのですが、のんびり読んでいただけると嬉しいです。 (12月11日 21時) (レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - いつも楽しく拝見させていただいています!大変だと思いますがご自身のペースで続けて欲しいです!まつりさんの作るシーリーズ大好きです!!これからも頑張って下さい!応援しております。 (12月11日 18時) (レス) @page1 id: 933da0752b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まつり | 作成日時:2023年6月15日 16時

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