194グラム ページ5
翌朝――
「朝ごはん作ってくるだけだから――」という零の声で目が覚めた。
零の腕の中に居る私は、ぎゅっと彼の腕を掴んでいる。
「一晩中君に拘束されていた気がする」
「眠れなかった?」
「いや、よく眠れたよ。次もこうしてくれる?
さぁ、ご飯ができたらもう一回声をかけるから、そろそろ手を離してくれるかな?」と、宥めるような声とキス。返事をする前に後ろから手が伸びてきて抱き寄せられるし、頭に唇が落ちてきた。
「今度は俺に独り占めさせてくれる?」
「シュウ、近いよ……?」
衣擦れの音さえしなかったということは、一晩中この距離にいたということなのかしら。
確かに自由に寝がえりを打てなかった身体はどこか痛い。
零が隣から去るのと同時にシュウに抱き寄せられたので淋しさはなくて。
私はどこまでも2人に甘やかされているのだと思い知る。――だからこそ、少しでもいいから役に立ちたいだけなのに。
結局話を掘り下げることもできず、あのままソファで寝かしつけられてしまった。
「私が寝た後、零と何か話した?」
「いや。特に。
今日も君は出社する?」
「だって、合同捜査途絶えちゃうんでしょ? っていうか、その要因、零は知ってるの?」
「どうやら彼は、FBIがNOCリストの件で公安に不信感を持ったせいで距離を置いたと思っているようだ」
説得力のある筋書きだよな、と、シュウが言う。
「何それ、シュウからちゃんと説明してよ!」
いやいや、私が寝た後話してるじゃん。……もしくは、喧嘩。
「俺の話に彼は耳を傾けない。それに、敵がここまで近づいているならFBIは距離を取った方がいい。敵に情報を盗まれないためにも」
そんな顔をしなくても、零君だって本当は違和感にくらい気づいているはずだ。
なんていう。
いつもいつも、相手を信頼しすぎて真実を言葉にしないの本当にどうかと思うんだけど。
でも――
「今までずっと、零とシュウはこの関係でいろんなことを解決して生き延びてきたってことなんだよね? シュウが組織に居た頃から」
首に手を回して抱き着けば、背中に添えられていた手に力が入った。
「そうだ、だから今回も平気だ。それに、今回は君がいる」
私ではなく、自分に言い聞かせているのかもしれない。私たちは互いの存在を確かめるために、唇を重ねた。
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まつり(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます!あれもこれも書きたくてなかなか完結しないのですが、のんびり読んでいただけると嬉しいです。 (12月11日 21時) (レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - いつも楽しく拝見させていただいています!大変だと思いますがご自身のペースで続けて欲しいです!まつりさんの作るシーリーズ大好きです!!これからも頑張って下さい!応援しております。 (12月11日 18時) (レス) @page1 id: 933da0752b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2023年6月15日 16時