226グラム ページ37
「A、人が料理を作り始めた後に勝手に家を出るような男とは付き合わない方がいいと思うが―ー」
料理を手伝わなくていいから、部屋を片付けるように言われた私が、途中で飽きてソファで読書をしていたら、零がやってきた。
ソファに座っている私のごく近くに座り、こめかみにキスをする彼の身体からはとても美味しそうな今夜の夕食――和風ステーキソース――の香りがした。
「うん。私薄々気づいたんだけど、三人揃って、集団生活に向いてないよ、私たち」
零に抱き着いて、柔らかい蜂蜜色の髪にキスをした。
言葉ほど怒ってないところを見ると、私と零を二人きりにするためになんらかの理由を付けて、シュウがふらりと出ていくことなんて零にはお見通しだったんだろう。
正直、私と零やシュウよりも、シュウと零の方がずっと「以心伝心」で心が伝わりあっている気がする時がある。
――そんなことで妬いたりしないけど――
いや、嘘だ。ちょこっと妬いている私の心をほぐすかのように、零は私の頭を撫で、優しくハグして何度も甘く唇を重ねていく。
会いたかった、いい子にしていた？ 大好きだよと甘い言葉を柔らかい声でたくさん注がれるだけで、あっという間に小さな嫉妬心は溶けていく。
「それなのに、僕と赤井の出入りを許可しているAは偉い。
そうそう。赤井用の肉は下ごしらえして冷凍しておいた。今度あれを使って、上手いビーフシチューにでもするよ」
「ご馳走三昧。嬉しい。でも次は魚食べたい。
私とシュウだと魚ななんて絶対に食卓に並ばないもん」
「Stargazy pie(ニシンパイ)でも頼んでみたらどうだ？」
ロンドン生まれアメリカ育ちのシュウには荷が重いんじゃないかと思うけど。
「いいけど、それだとクリスマス前にお腹いっぱいになっちゃう」
確かあれは12月23日に作るパイじゃなかったっけ……？
「わかった。明日の朝焼き鮭を用意しよう」
「やった。さすが零」
零は忙しくて不在がち、自分の感情を隠すのがあまりにも得意なことを除けば、本当に完璧で素敵な恋人だと思う。
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まつり(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます！あれもこれも書きたくてなかなか完結しないのですが、のんびり読んでいただけると嬉しいです。 (12月11日 21時) (
レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - いつも楽しく拝見させていただいています！大変だと思いますがご自身のペースで続けて欲しいです！まつりさんの作るシーリーズ大好きです！！これからも頑張って下さい！応援しております。 (12月11日 18時) (レス) @page1 id: 933da0752b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まつり
| 作成日時：2023年6月15日 16時
