222グラム ページ33
翌朝――
食欲をそそる美味しそうな匂いで目が覚めた。
「シュ……?」
身体を起こそうとした私は、そこで初めて抱きしめられていることに気が付いた。
いつもどれほど抱き合ったあとでも、よく朝起きたときにはパジャマを着ていることの多いシュウだけど今日は全くの裸で、ドキドキする。
そういえば、ものすごく遅い時間まで愛し合ったもんね――。
私の身体もバスローブで巻いているだけだ。汗を拭いて力尽きたに違いない。
――ってことは――
「零っ」
味噌汁に焼き魚、健康的な和食の香りだもん。
零が仕事を早めて帰ってきてくれたに違いない。
ぴょんと飛び起きた私はバスローブ一枚でキッチンに向かってスーツの上着だけ脱いで調理している零に抱き着いた。
「――歓迎してくれるのは嬉しいが、いくらなんでも刺激が強すぎる」
と、彼がちょっとだけ怒った顔で苦言を呈したのは、いっぱいいっぱいキスを交わした後だった。
あんな電話をした後に二人で抱き合うなんてどういう神経してるんだ、と、零がシュウに噛みついているのを見て、「日常が戻ってきて嬉しいなぁ」という気持ちでいっぱいになりながら、美味しい朝食を頬張った。
この騒がしさがないのは、すごく淋しい。
「A、人の話を聞いているのか?」
と、私の名前を呼ばれるまで、まさか私に対して説教しているなんて思いもしなかったのでびっくりした。
「え? だって仕方ないじゃん。零はいないし、シュウは私を丸め込むのがうまいし」
「君がその気にさせるのがうまいんだろう? Kitty」
「そっかなー」なんて話してたら、「いちゃつくな!」と怒られる始末だ。
なんか理不尽
「零、寝不足なんでしょ? 朝ごはん終わったら一緒に寝よ?」
睡眠不足は人をイライラさせるよね。
「まぁ――Aがそう言うなら」と零も了承し、結局そのまま午前中は昼寝で潰してしまった。
でも、昼過ぎに零と一緒に起きたときには昴さんが美味しいパンを買って戻ってきたところだったので、おそらくその時間にメアリーに監視がいなくなったことを伝えに行ってくれたはずだ。
私たちはいつだって、とても近くにいてにこにこ笑い合いながら、互いに息を詰め危ない橋を渡り続けている。
しかも、夜になれば互いに衣服を取り払い、他人には知られたくないほどの痴態をさらしあっているので、――本当に私たちの関係は一言では言い表せないと思う。
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まつり(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます!あれもこれも書きたくてなかなか完結しないのですが、のんびり読んでいただけると嬉しいです。 (12月11日 21時) (レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - いつも楽しく拝見させていただいています!大変だと思いますがご自身のペースで続けて欲しいです!まつりさんの作るシーリーズ大好きです!!これからも頑張って下さい!応援しております。 (12月11日 18時) (レス) @page1 id: 933da0752b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2023年6月15日 16時