220グラム ページ31
タイミングを計ったかのようにベランダに続く窓が開いて、すっかり冷えたシュウが戻ってくる。
「そんなに外に出ていると誰かに見られちゃうよ?」
私は慌てて頬の涙を拭って何でもない声で言った。
「このマンションのベランダがどこから見えるかなんて確認済みだ。
手は打ってあるから心配いらんよ。
そんなことより、すっかり冷えてしまった。温めてくれないか?」
他の男のことで泣いている私のことを、シュウは当然のように抱きしめてくれるから申し訳ない気持ちでいっぱいになる。言葉通り冷え切った指先を握り、彼の高い鼻に自分の鼻を重ねた。
「シュウ、冷たすぎ」
「こういうのは相対的な問題だからな。存外、君が温かすぎるだけかもしれんぞ」
くすくす笑って、冷たい彼の頬を手のひらで包み込み、キスをした。
唇の表面は冷たいけれど、重ねているうちに熱が伝わって温かくなる。
気付けば舌を絡め合っていた。さすがに口内は熱いし、唾液は煙草特有の香ばしさと苦みがあった。
長いキスの後、すっかり体温が戻って、むしろ熱くなったシュウの膝に座り抱き着いて息を整えていると彼の方から口を開いた。
「どうしていつも限界になるまで平気なふりをするんだ。
言ってくれれば、零君の行方を探ってここにいつだって引っ張ってきてやるのに」
「――ふりじゃないもん。本当に平気なの。
限界は急にやってくるの。
それに――嫌でしょ?」
キッド君と同じ部屋で変装を習っていただけでもあれほど怒るのに。
相手が降谷零なら耐えられるなんて、意味が分からない。
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まつり(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます!あれもこれも書きたくてなかなか完結しないのですが、のんびり読んでいただけると嬉しいです。 (12月11日 21時) (レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - いつも楽しく拝見させていただいています!大変だと思いますがご自身のペースで続けて欲しいです!まつりさんの作るシーリーズ大好きです!!これからも頑張って下さい!応援しております。 (12月11日 18時) (レス) @page1 id: 933da0752b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2023年6月15日 16時