216グラム ページ27
食事を終えた私たちは今――ホテルの部屋の一室に居る。
「だから、――そうじゃないって言ってるでしょ？
ふふ、存外におねーさんって不器用なのね。そんなところもかーわいい」
私の頬に手を這わせながらキッド君――が変装しているビジネスウーマンがくすくすと笑う。あまりにも近くで笑うので耳朶に吐息が触れてドキッとする。
「ちょ……、変な気になるからやめて？」
「あら、変な気になってくれて大歓迎よ？ それでね、次はここ」
長い指先がするりと私の鼻を撫でた。
「ほら、動いちゃだーめ。いい子にするって言ったのはAさん、でしょ？」
色っぽいお姉さんが私の耳元で意味ありげに話すと、倒錯的な気分になる。
あと、急に名前を呼ぶのも辞めてほしい。
流されちゃダメ。
調子に乗って耳元にキスしようとするから
「こーら、キッド君？」と私は低い声を出して彼の暴走を嗜めないといけない。
「な……！だって同意の上、だろ？」
悪戯が見つかった子猫みたいな顔で私をにらむ。
はぁ。キザな怪盗でもある彼は、まるで何もかも知っているみたいな色っぽい笑みを浮かべて見せるけど、中身は男女交際未経験の高校生って知ってるんだからね？
「同意したのは変装メイクの方法を教えてくれるって言ったから！」
「はいはい。不器用なおねーさんも照れてるおねーさんも私のドストライクよ？ 早く変な気分になって頂戴？」
結局、からかわれる羽目になった。
いつまで経っても戻らない私を探し始めた昴さんが、この部屋を探り当てて辿り着き、散々説教したのはしばらく後のことだった。
※
結局、バーボンのみが見張っているのなら被害はないだろう、このまま持久戦に持ち込むのが最適解――ということになったらしい。
マスミを巻き込むわけにはいかないので、毛利家にお世話になることにした。
マスミの代わりにシュウがメアリーと一緒にいればいいのに、という私の提案は二人ともに却下された。
実際のところ、シュウとメアリーはとても気が合うのに。
困った人たち――と、私は内心思っている。
困った人たちだから、きっと私は一生、この人たちから離れられない。――って。
ホテルの去り際にハグしてくれたメアリーも、マスミを送り届けた後2人っきりになって「君には警戒心がなさすぎる！」って説教してきた昴さんも、私と同じ気持ちだったらいいのにな、と、強く思った。
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まつり(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます！あれもこれも書きたくてなかなか完結しないのですが、のんびり読んでいただけると嬉しいです。 (12月11日 21時) (
レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - いつも楽しく拝見させていただいています！大変だと思いますがご自身のペースで続けて欲しいです！まつりさんの作るシーリーズ大好きです！！これからも頑張って下さい！応援しております。 (12月11日 18時) (レス) @page1 id: 933da0752b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まつり
| 作成日時：2023年6月15日 16時
