214グラム ページ25
彼女は冗談みたいに、ハンバーグとパスタをぺろりと平らげた。その細い体のどこにそんなに入るのかちっともわからない。
彼女は滑らかに雑談をする。
本当に差し障りのない話だ。
前回、半ば喧嘩腰に絡んできたのとはまるで別人。
――組織の人、じゃ、ないよね?
「ところで、先日の問題は解決したんですか?」
私は彼女がフォークを置いたところで口を開いた。
「――してないわよ。……もしかして、本当に私のこと誰かわかんないの?」
きょとんとする私を見て、彼女はため息をついた。
「せっかく痕跡残したのに」
「えっと……仕事上の……?」
痕跡って、どこかのサイトに痕跡を残した、という意味なんだろうかと真っ先に思った。
だけど、私の仕事だということは基本的に表に出していない。
「違うわよ」
そういうと、彼女は飲みかけのコーヒーカップを置いて、私を見て優雅に微笑んだ。
「その感じだと、おにーさんが1人でカード回収したのか……。隠し事なんてしない男と付き合った方がいいんじゃないの、おねーさん?」
周囲に聞こえない程度に声のトーンを落として、彼女は言う。
別人のように鋭い視線が、私を射抜くからゾクッとする。
「でも、全然気づかず話してくれてたなんて、自信持っちゃう。私たち親友になれそうね?」
一瞬後はもう、いつもの彼女に戻ってにこりと笑っていた。
――おねーさん……?
え、キッド君なの?
いかにもビジネスパーソンとしてそつのない雑談を繰り広げていた彼女の中身が、あのいつも冗談ばっかりいうおちゃらけた高校生とはとても思えない。
お近づきのしるしに、スイーツをご馳走したいわ。どれがいい? とメニュー表を開きウェイターを呼ぶ彼女の姿は、洗練された社会人の姿だった。
141人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まつり(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます!あれもこれも書きたくてなかなか完結しないのですが、のんびり読んでいただけると嬉しいです。 (12月11日 21時) (レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - いつも楽しく拝見させていただいています!大変だと思いますがご自身のペースで続けて欲しいです!まつりさんの作るシーリーズ大好きです!!これからも頑張って下さい!応援しております。 (12月11日 18時) (レス) @page1 id: 933da0752b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まつり | 作成日時:2023年6月15日 16時