210グラム ページ21
翌朝――
目が覚めたとき隣には誰もいなかった。
手を伸ばせばまだ布団は温かいのでついさっきまで傍に居てくれたに違いない。
昨夜、シュウは私をとても甘やかしてくれた。
零が不在であることの淋しさをシュウで埋めているつもりはないけれど――朝起きた瞬間そう思ってしまうということは、私もたぶん淋しさの限界なんだと思う。
せめて、週末くらい帰ってきてくれてもいいのに。
昨日、松下さんをはじめ数名が、飲み会に参加できたくらいだから公安が何か差し迫った仕事を追いかけているってことはないはずだ。
はぁ、とため息を飲みこんで身体を起こし、充電していたスマホに手を伸ばした。
スマホが点滅しているので慌ててみたら、マスミから何度も着信が入っていて驚く。
私は電話をかけなおす。
「ごめん――寝ている間着信切っていて。どこに行けばいい？」
「ああ、A？深夜に何度もごめん。気が焦っていて――。
今は平気。
どうも、誰かに見張られているみたいでさ。ボクだけじゃなくてその――」
メアリーが、ということだろう。
「どこに行けばいい？ 迎えに行くわ」
慌ててパジャマのまま部屋を抜け出せば、そこには沖矢昴が居た。
シャツのボタンを留めながら歩いて――私と目が合った瞬間、ふわりと微笑んだ。
きっと、電話の着信を見て慌てて着替えたんだよね。
私の傍を通り抜けたと思ったら寝室に行って――ルーム用のロングカーディガンを持ってきてくれた。
場所を打ち合わせて電話を切る。
「マスミが誰かに見張られているみたいっていうの。
メアリーも同じ情報を持っているのね。先日泊まったホテルに居るって。
誰に追われているのかしら――」
言いながらも脳裏に、私が大好きで愛しくて――敵に回すわけにはいかない男の姿が脳裏を過る。
メアリーは、例の薬を組織の人に飲まされたと言っていた。
嫌な予感しかしない。
「まずは、パンを食べるといい。スープも作った。
ホテルには俺が行ってこよう。ルームナンバーは？」
まだその声は、赤井秀一のモノだった。
「ダメよ。沖矢昴の正体をばらすようなものじゃない！」
彼は少しだけ困った顔をして――何か言いかけて唇を閉じた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 141人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まつり(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます！あれもこれも書きたくてなかなか完結しないのですが、のんびり読んでいただけると嬉しいです。 (12月11日 21時) (
レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - いつも楽しく拝見させていただいています！大変だと思いますがご自身のペースで続けて欲しいです！まつりさんの作るシーリーズ大好きです！！これからも頑張って下さい！応援しております。 (12月11日 18時) (レス) @page1 id: 933da0752b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まつり
| 作成日時：2023年6月15日 16時
