192グラム ページ3
零は優秀だし一人で何もかもできるから、その分孤独も大きくて。
どう頑張っても私は同じところに立って同じ景色を見ることはできそうにない。
「れーい、大好き」
角度を変えて抱き着きなおして頬と頬を擦り合わせる。
「僕もだよ、Aのことが大好きだ。
分かってる。君の気持は。
中立の立場で居てくれることも」
零の手が私の髪をなぞるように撫でた。
夏に切った私の髪の毛も、順調に伸びてきていた。
「でも、僕に赤井のことを信じろっていうのは酷、だろ?」
耳元で囁かれる小さなテノールの声。
私の高まった期待を一気に萎ませるには十分だった。
ああそうか。赤井さんは死んだってことにするほかなくて、なかな零に真実を伝えることはできなかった。
そうだよね、カードを見せ合おうっていうのはフェアじゃなかった。
そもそも私たちが互いにカードを見せ合わないのは相手に心配や負担をかけたくないからだ。
それに、長い間沖矢昴の正体だって零に対して隠していたのに、急にこっちがカードを見せるなんて言ったって、零の心に響くはずがないのかもしれない。
落ち着いて考えてみたら、じゃあ私の手持ちのカードで零に見せられるものって他に何かある? ってことになる。
組織の人間である零に、「コナン君の正体」とか「哀ちゃんの正体」を簡単に明かせるはずもなく、ましてや、「シュウのお母さん、組織のせいで縮んじゃってるの!」なんて言えるわけもなくて、結局のところ手持ちのカードを全部素直に開くことはできない。
ふう、と、無意識のうちに深いため息をついていた。
「ごめん。私の事情を押し付け過ぎた。
今のままでも十分――」
言葉を最後まで言い切る前に、零の唇が重なった。
「先が見えない今、一度、赤井秀一のことは忘れて沖矢昴と付き合うのが一番だと思う。もちろん、僕は見かけ上でも別れるつもりはないけど。安室透はそう簡単に恋人の浮気には気づかない」
感情を押し殺して最適解を導くの、本当に辞めて欲しい。
あと、安室さんの設定が雑!ファンに謝って!
「――だって、昴さんがシュウだと思われたら困るでしょ?」
「半年も経っている。誰も重ね合わせたりしない。そもそも君と赤井が恋人だと思っている人間はどれほどいる? 少なくとも組織には僕以外誰もいない。心配いらないよ」
変なところで意見が合うの、ほんっと納得いかない。
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まつり(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます!あれもこれも書きたくてなかなか完結しないのですが、のんびり読んでいただけると嬉しいです。 (12月11日 21時) (レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - いつも楽しく拝見させていただいています!大変だと思いますがご自身のペースで続けて欲しいです!まつりさんの作るシーリーズ大好きです!!これからも頑張って下さい!応援しております。 (12月11日 18時) (レス) @page1 id: 933da0752b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2023年6月15日 16時