207グラム ページ18
【ASide】
その週末、公安の人たちとの合コンは無事に開催できた。
昴さんは珍しく間に合わないと言ってきた。
公安の人たちはもちろん、正体を隠すことには慣れているので不自然さはなく自然に会話ができる。
そして私は話の端々から、零が公安に顔を出してないことを知ってしまった。
外されたのか――
それともまた、組織に潜入しているのかな
おはよう、とか、元気にしている?とか、時折短い時間だけど電話で話すことが出来るからてっきり公安で仕事をしているのかと思っていたけれど……
私にどちらか知られないように、自分の中のルールを変えたのかもしれない。
零はすぐに居なくなる。
私は別に「仕事と私どっちが大事?」って恋人に喰ってかかるような性格じゃないと思っていたけれど、ここまで何もかもわからないと――。淋しいし心配だし、不安になるよ。
私は他愛ない会話で盛り上がっている人たちの邪魔をしない程度に会話を挟み、お酒を飲みながら周りの様子を見て席を離れ、喫煙エリアで松下さんに例の「ウダ」という人物について探りを入れていた。
割と年上の人で合同捜査本部に顔を出したことはないらしい。
「じゃあ私はお会いしたことがないんですね」
私の問いかけに、松下さんは頷いた。
「ええ、他にも色々と案件を抱えている方なので忙しくて……」
「降谷さんや風見さんの上司にあたるんですか? 私もお会いできることはないのかな……。残念です」
「合同捜査本部そのものが一度白紙になるって言う話もありますからね」
「そうですよね……。私自分の仕事が減っちゃうのが残念で。誰に交渉すれば良いのかなと思っていたんですが、ウダさんにはお会いできそうにないですよね」
「ああ……。仕事の案件数が給料にも影響するって感じですか? もしかして」
露骨にがっかりしてみせたので、松下さんは察してくれたみたい。
「ふふ。自分のことばかりですみません。公務員の方にはこういう感覚伝わらないでしょうし、いいです、忘れてください」
「月曜日の午前中は登庁することも多いので、良ければ顔を出してみてください。まだ今なら入れますよね? 僕が問い合わせてみます」
「ご迷惑じゃないですか?」
「とんでもない。蘇芳さんのアイデアには驚くことも多くて感謝しているので、このくらい」
「嬉しいです。ありがとうございます」
私は煙草を消すと一足先に席に戻った。
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まつり(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます!あれもこれも書きたくてなかなか完結しないのですが、のんびり読んでいただけると嬉しいです。 (12月11日 21時) (レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - いつも楽しく拝見させていただいています!大変だと思いますがご自身のペースで続けて欲しいです!まつりさんの作るシーリーズ大好きです!!これからも頑張って下さい!応援しております。 (12月11日 18時) (レス) @page1 id: 933da0752b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2023年6月15日 16時