203グラム ページ14
「命を狙われているくらいだから、本人が組織の一員ということはないだろう。
本当に組織の裏切り者なら、逆に生きたまま放置されるとも思い難い。
ただ、そうか。
パンドラか――」
昴さんはすっかり忘れていたのかもしれない。
「でも、おかしくない? Z社が鉱山を持っているんだから最初から自分たちのものじゃない、パンドラなんて」
不老不死の薬があるなら、最初から売らなければいいだけだ。
わざわざ売って怪盗に真偽を判定させた後に回収するなんて手間がかかりすぎる。
「彼が探しているのは大抵古い宝石だ。既に売ったもので自分たちでは見分けがつかない。怪盗キッドだけが何らかの理由で見分け方を知っているなら――。真偽を確かめさせた後で回収する、というのは悪くない方法だ。
確かに手間はかかるし非効率的だが――組織の行動は君が考えるよりははるかに非効率的だ。効率を重視しているなら、あんなにNOCばかり採用するわけないだろう。
ついでに言えば、FBIや公安のやってることだって君から見れば非効率的なことばかりなんじゃないか?」
「どうせ私は効率至上主義ですよー」
「いや、君を褒めているんだ。俺や零君には無い視点を君はしっかり持っていていつも感心している」
拗ねないで、Kitty、と彼は言うと機嫌を取ろうと即座に追加のケーキを頼もうとするから慌てて止めた。今日のお昼はあんなに多かったのに、いくらなんでも食べ過ぎだ。
私たちはその日も夜遅くまであれこれ調べ物をした。
ちなみに疲れ切っていた私は途中で眠ってしまったのでその後のことは覚えていない。
翌朝目が覚めたとき、見知らぬ場所(ホテルの一室を抑えてくれた)だった上に昴さんが添い寝していたので若干パニックにはなったけれど、「着替えを持ってきてないので今日は我慢して」と囁かれてはそれ以上どうしようもなかった。
――そうだよね。シュウが珍しく律儀に二人が付き合ってるなんて届け出を出しているんだから、ジェイムズも止めようがないよね――
結局、昨夜はここに運んだだけだ。今朝も、君がいやなら何もしないという彼の言葉に焦れて、朝のキスを奪いに行ったのは私の方からだった。
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まつり(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます!あれもこれも書きたくてなかなか完結しないのですが、のんびり読んでいただけると嬉しいです。 (12月11日 21時) (レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - いつも楽しく拝見させていただいています!大変だと思いますがご自身のペースで続けて欲しいです!まつりさんの作るシーリーズ大好きです!!これからも頑張って下さい!応援しております。 (12月11日 18時) (レス) @page1 id: 933da0752b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2023年6月15日 16時