不意打ち(190グラム) ページ1
「でも」
シュウの言いたいことはわかるけど、それを言っちゃうと、零が傷つくかもしれない。
根拠もなく零を動揺させるのは嫌だ。
彼は強そうに見えるし、本人もそう信じていると思うけど意外と繊細なんだから。
そうでもなければ、告白する気も落とす気もない私の近くに、恋心を隠しながら4年も付きまとったりはしないはず。
「手持ちのカードは全部見せるんだろ? あえて伏せておいてミスリードを誘うのは良くない」とシュウにたしなめれらてしまう。
真実を伏せてミスリードを狙うのは、ミステリーの王道でしょ?
シャーロキアンの癖に、いやなことを言う。
「どうした、A。
何でも教えてくれ。その結果君を困らせるようなことはしない」
「私がソフトを渡したのは、風見さんなの」
おそらくは、降谷零が公安の中で唯一信頼している人物。
「風見……」
「もちろん、不正利用をしたのが風見さんだって言ってるわけじゃないし……ちょっと!」
立ち上がって出かけようとするのやめてほしい。今しがた、麦茶の代わりみたいな勢いでバーボン飲んだよね?
私はシュウの膝から飛び降りて零の手を掴む。
「今夜は出かけるの禁止。ここを出るのは、明日の朝7時以降にして。
そもそも話はまだ途中なの。全部聞かないとミスリードになるって、シャーロキアンのお兄さんも言ってるし」
「そうだ、俺の手持ちのカードだって開きたいんじゃないのか、零君」
「どうせ都合のいいカードしか見せないんでしょ。
そもそも僕たちは互いの手札の枚数すら把握することはできない」
拗ねたような口調で零がシュウを見る。
「残念だが、もはや俺たちに都合のいいカードなんてないことは明白だ。いろんな点で組織の方が一歩リードしている状況と言えるだろう。
FBIにネズミが居るかどうかはさておき、公安には確実にネズミが居る。
少なくとも1人、もしかしたらそれ以上。
しかも、君が相手の正体を知らないということは……」
「顔を合わせてないのか、あるいは僕のことを疑って隠密に誰かを送り込んだか」
「そうだとしたらしばらく、組織には顔を出さない方が賢明なんじゃないのか」
シュウの言葉に驚いた。
「え、零今、公安じゃなくて組織に行こうとしていたの?」
だとしたらますますこの手は離せない。
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まつり(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます!あれもこれも書きたくてなかなか完結しないのですが、のんびり読んでいただけると嬉しいです。 (12月11日 21時) (レス) id: 91a8359b9e (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - いつも楽しく拝見させていただいています!大変だと思いますがご自身のペースで続けて欲しいです!まつりさんの作るシーリーズ大好きです!!これからも頑張って下さい!応援しております。 (12月11日 18時) (レス) @page1 id: 933da0752b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2023年6月15日 16時