104グラム ページ13
「どうしたの、シュウ?大丈夫?」
逃げることを諦めた私は背伸びして手を伸ばしてシュウの頭を撫でて、綺麗な頬に両手を添えその細めている瞳を覗き込んだ。
いつもあんなに凛として頼りがいのある人なのに、この弱っている様はどうしたことなのか。
沖矢昴だから?
「何か大変なことがあったの?――私に手伝えることがあったら何でも言って」
身をかがめてくれたシュウの唇にキスをする。
周りの視線は痛いけど、このまま延々抱きしめられていることを考えると多分こっちの方がまし―ーっ!!
って思ったんだけど、全然良くなかった。何を勘違いしたのか、彼のキスは長くて――舌が歯列を割って私の口の中に入り込もうとしはじめる。
ぎゅ、ぎゅーと渾身の力でシュウを振りほどこうとするが、全くもって歯が立たない。
そりゃ、体格も身体の鍛え方も違うのは心得ているけれど、それでもシュウはきちんと私に配慮して力加減を考えてくれるのに――。
今日の彼は本当におかしい。
「お客様――!」と店員が控えめかつはっきりとクレームを申し立ててくれなければ、店内で何が始まるかわかったものじゃなかった。
「どうしたの?――ね、リアムに相談してみたら? シュウのブレインなんだよ、ね?」
私は慌ててリアムの背後に隠れる。だって、私の力ではどうしようもできないんだもん。
「心配しなくたって君のKittyに手は出さないよ、さぁ連れていってくれ」
とリアムは言う。
「ほら、これが鍵だ。ホテルの住所はすぐに送る。自分で運転して行ってくれ。国際免許くらい持ってるだろ」
と、シュウはリアムに鍵を投げつけ、私の腕を掴む。
その一瞬で鍵を落とすこともなく受け取るのは、さすが相棒って感じだけど……。
「俺はAの車で行く」
私は長蛇の列を見て店でコーヒーを買うのを諦めた。リアムに住所を送信した後、通りすがりの自動販売機で缶コーヒーを手に入れてシュウに渡す。
「ね、シュウ、痛いよ?」
「すまない――。でも、俺には君が必要なんだ」と、祈るように頼むように言われるとどうしていいのかわからない。
「どうしたの? 心配しなくても、私がシュウを連れていくわ。リアム、日本の運転は大丈夫?」
ロングヘアを持つ金髪の美丈夫は、こんなこと慣れっこなのか爽やかに微笑んだ。
「駄目だといったところで、君の隣の番犬に噛みつかれるのが落ちだろうな。平気だ。後で会おう」
颯爽と歩いていくリアムを見送りつつ、私はシュウと空港を歩いた。
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まつり(プロフ) - ユーキさん» コメントありがとうございます。そうなんですよ。赤井さん滅多なことでは嫉妬しなさそうなのでシチュエーション作るのに手間がかかりました(笑)更新頑張ります!もちろん、読んでいるあなたが夢主ちゃんですよー! (2023年4月21日 11時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
ユーキ - 最高です!赤井さんが嫉妬するとかヤバい!夢主ちゃんになりたいよぉ!更新楽しみにしてます!応援してます (2023年4月21日 11時) (レス) @page20 id: 7dd99af247 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2023年3月30日 11時