Backstage9 ページ9
「Aが沖矢昴でいて欲しいというなら、俺は今まで通りずっと――」
ああ、だめ。そういうことが言ってほしいわけがない。
しかも、この人はきっとそう決めたら、本当にそうしちゃう。
そういう、とても強い意思を感じる。
周囲に偽るだけでなく、自分自身からもすっかり「赤井秀一」を忘れ切ってしまうかもしれない。
私はするりと秀一の腕から抜け出すと、ソファの後ろに回って抱き着くと背伸びして彼の頬に手を伸ばす。優しいあなたは私のためにかがんでくれるから、私は勇気を振り絞って唇を重ねた。
「そういうんじゃないの。
あのね。どういったらいいか全然わからないからまとまってないけど。
イケメンの中身がまた別のイケメンだったら動揺するでしょ?
ハイスペックの正体が、また別のハイスペックだったら混乱するでしょ?
慣れてないだけだから、ちょっと待って。秀一のままでいてくれていいから……」
ダメだ、うまく言葉にできない。
しかも、名前を呼ぶのがとてつもなく恥ずかしい。
ハードルが高い……
むしろ、記憶もないのにどうして私はこの人を呼び捨てにできたどころかその、あんなことやこんなことまで……!記憶のない私、なかなか強メンタルなのでは……?
でも、記憶が戻ってしまった今、なかなか同じようにするのは難しい。
129人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まつり | 作成日時:2022年5月25日 13時