ペリドットの秘密8 ページ35
「A、わかった?」
明るい部屋の中で、自分の服をかき集めるのももどかしく手っ取り早くそこにあった昴さんのシャツを掴んで身にまとっておとなしく待っていた私に、シャワーを浴び終えた彼が戻ってきた。
赤井秀一の、姿で。
一緒にどう? って誘われたけれど、恥ずかしすぎて断って待っていたから。
「電気は消した方がいいってことなら、すごくよくわかったけど?」
ほんっと、恥ずかしい――。
「そう? 覚えておこう」
絶対に聞き流された気がする。
「ほら、いい子だからシャワー浴びてきて。
これからでも、夕食食べるだろう?」
時間は多分、21時を回っている気がする。
そういうと、微妙に警戒している私の頭を撫でた。
「ほら、この姿だと警戒するだろう?
君が、沖矢昴に慣れていて、そっちの方が安心するなら俺はそれで構わない。
ただそれだけのことだよ」
「違うもん――」
反論しようとした私を、緑色の瞳がまっすぐにのぞき込む。
「なるほど、無自覚にまとわりついているわけか」
彼は極上の笑みを浮かべると、触れるだけのキスをした。
「君のせいじゃないし、別に負担ではない。
他に何か確認しておきたいことは?」
「秀一、家できちんとくつろげてる?」
「そうだな、君が傍に居てくれているときは、いつでも」
「また会いたいって言ったら会える?」
秀一さんは一瞬形の良い瞳を丸くして、くつくつと笑う。
「本当に同一人物だってわかってる?」
「わかってるけど、混乱もしてる――」
「Aが望むなら、いつでも。
――納得したら、風邪ひく前にシャワーを浴びておいで。――それとも、もう一度ここで――」
耳元で続けられそうになる熱のこもった甘いささやきを全て聞く前に、私は慌てて部屋を後にした。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年5月25日 13時