ペリドットの秘密4 ページ31
大した内容もない、雑談だけど十分に楽しい。
「Aさんはどうやって昴さんと知り合ったの？」
ふいに、恋愛の話になった。
「スバルさんって誰だよ？」
世良ちゃんが首をかしげる。
「Aさんの彼氏さん――って、そっか、世良ちゃん、会ったことなかったっけ？
今は新一君の家に住んでるの」
園子さんはさりげなくいったんだけど、途端に世良ちゃんの目の色が変わった。
「へえ？ 工藤新一君の家に、ねぇ」
――工藤新一君の、家。
え？ 私が今住んでいる家って、『工藤新一』の家なの？
ドキドキと脈が早まる。
コナン君は、『まるで我が家のように』家の中に走っていった。
哀ちゃんは、サッカーが終わった後コナン君に『クドー君』って言った。
美術館においては、おそらく『工藤新一』は『怪盗キッド』の変装だった。
そして、コナン君は沖矢昴の正体を知っている――
何の気なしに目にしたこれまでの風景が、一瞬にして頭の中をよぎっていく。
「新一、ほら、全然家に帰れないじゃない？
だから、貸してあげたみたいよ。
昴さんは火事で住んでいたアパートが全焼したんだって」
蘭さんが簡潔に状況を説明した。
「ねぇ、お姉さんはいつ、彼氏に出会ったの？」
世良ちゃんは、ひどく、思いつめた表情を私に向けた。
期待と不安が入り混じったような――
「――いつ、だったかな――。
真冬の公園だったかも？
私が迷子の猫に絡まれて放っておけなくて困っていたら、声をかけてくれたのが最初だったような……。
ごめんね、私、一月ちょっと前に事故に遭っててあんまり昔のことが思い出せないの」
「でも、だいぶ記憶戻ってるんですね」
蘭さんがにっこり笑って励ましてくれた。
「ええ。そうなの」
私も微笑んで、頷いた。
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作者名：まつり
| 作成日時：2022年5月25日 13時
