home bitter home2 ページ24
「――見る?」
彼は小さな切り抜きを手に、逡巡していた。
「そうね――。まさか、客観的な見解があるなんて思ってもなかったので。
見ておこうかしら」
――私の両親はある日忽然と姿を消して、それっきり、だ。
それは、私を棄てたからだと思っていた。
他の可能性なんて考えたこともなかった。
『Aさんのことを――秘密にしておくことで何かから守ってくれてたって可能性はありませんか?』
いつか、昴さんはそう言ってくれたけれど、そんな夢物語にしがみつく気は起きなかった。
見せてくれた切り抜きのタイトルは「鋤野一家失踪か?」とあった。
最初の記事は「行方不明」と事件性を匂わせていたのに、ここではそのような可能性などないという論調で落ち着いていた。
「昴さん、こっち見た?」
私は数日前の記事を見せる。
受付に新聞を持ち込み、複製を依頼。勝手な切り抜きについても伝え、私たちは書庫を後にした。
ついでに、まだ昼前で空いている学食でランチを食べた。
失踪の件には触れたくないので、当たり障りのない会話を楽しむ。昼間の世界も、悪くないなと思いながら。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年5月25日 13時