Call Spade6―赤井side― ページ22
「他の家族みたいに攫われるのを防ぐためですか?」
『今日のデザートはプリンですか?』みたいな何の気ない柔らかい口調で、ぞっとするほど物騒なことを問うのはやめてほしい。
キッドはたった一晩でそこまでたどり着いたというのだろうか。とはいえ、こちらの情報は何一つ渡したくない。
「さっき切り取った記事を渡していただけますか?」
どこにも感情を乗せずに、用件だけを切り出した。
地方新聞の古い記事だ。これまで目にしたことがないことを加味すると、デジタル化にも対応していないと思われる。
ここを逃すと、履歴を残さずに記事を探し出すのはなかなか厄介だ。
「別に、いいですよ?
先輩が二度と私に構わないでいただければ。
昨夜みたいにあんなに直接的に心臓(ハート)めがけてアプローチされると、さすがに心拍数あがっちゃうので」
ライフルで心臓が狙われたことを、恋の告白みたいに表現するとはいったいどういうセンスをしているんだ……
こいつのふざけたペースに巻き込まれる前に話を切り上げたい。
「そちらがこちらに今後一切干渉しないと言っていただけるなら、善処いたしましょう」
「それは難しいかも。
私、トランプが好きなんです。
彼女はふわりと笑って見せた。
遠くから見れば、雑談を楽しんでいるようにしか見えないだろう。
「でも、先輩と戦うのは避けたいわ。
まさか、昨日の今日で大学に出向いてくるなんて意外だったし。
とりあえず、これは渡しておくわね。器物破損で捕まるのも嫌だから」
小さくそういって新聞の切り抜きを渡すと、ぺこりと頭を下げる。
「沖矢先輩とお話しできてよかったです。可愛い彼女のためにも、私とのおつきあいは諦めてくださいね。」
では、と、頭を下げ踵を返すとスキップでも始めそうな軽い足取りで去っていった。
手渡された記事には「鋤野一家失踪か?」と物騒なタイトルがつけられていた。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年5月25日 13時