Call Spade1 ページ17
目を覚ましたのは、広いベッドの上だった。
私しかいない。サイドテーブルに手を伸ばすと、秀一の腕時計が置きっぱなしになっていた。時刻は朝の8時。
私は着替えもせずダイニングへと走る。
「――昴、さん――?」
彼はすっかり沖矢昴として――ハイネックを身にまといジャケットを着て眼鏡をかけて目を細めて声すら変えて――そこにいた。
もしかして、私のせいで秀一でいるのやめちゃった?
「ああ、今日は大学に行こうと思って」
昴さんは何でもない事みたいに言う。
「昨日、あれからちゃんと寝た?」
「ええ、もちろん――。わ、危ないっ」
スクランブルエッグを作っていた昴さんに後ろから抱き着いた。
彼はあきらめて火を切ると、私の方に向きなおす。
「料理中は危ないから抱き着いちゃだめって言ったでしょ?」
「でも――」
昴さんはくしゃっと私の頭を撫でる。
「Aさん、怖い夢でも見ましたか? 朝のキス、してないから拗ねてます?」
「だって」
昴さんが、私のせいで、赤井秀一をあきらめてしまうのは、いやだ。
泣き出しそうな私の、唇を彼の唇がそっとふさぐ。
たぶん、私にその話をさせないために。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年5月25日 13時