Backstage2 ページ2
控室に居た人たちはようやく目を覚ましつつある。
我に返った中森警部は腹立たしさを部下にぶちまけていた。
大変そうだなあ――
目覚めた蘭さんは自分が園子さんの腕をつかんでいたことに気づいて驚いて目を丸くする。
「え……どうして……?」
コナン君は肩をすくめて「僕も眠っていたからわからないや、ごめんね。新一にーちゃんはキッドを追いかけていったのかも」と、もごもごと説明していた。
園子さんはキッドを見そびれたことを残念がる一方で、「昴さーん❤ お会いしたかったでーす!」とにこやかに手を振って話しかけていたので、メンタル的なダメージはなさそうだった。
私も途中で眠らされたので肝心なところの記憶はない。
昴さんは自分が駆け付けたときには、怪盗キッドの姿は煙のように消えていたというのだから、今回、キッドの犯行を目撃した人は美術館内では皆無に近い。
騒ぎの中で扉の鍵を壊したのは誰だ――ということを言及する人はいなかった。
もしかしたら、昴さんは誰にも見つからないうちにそっと、銃弾を回収したのかもしれない。
「帰りましょうか?」
私がスマホをなくしたことに気づいて青ざめ始めた頃、昴さんがそう声をかけてきた。
「……私、スマホどっかに落としたかも。自販機の前かな? 取りに行って――」
と、駆け出そうとしたところ
「ああ、あれなら落ちた拍子にすっかり壊れたみたいですね。
私が拾っておきました」
と、滑らかな口調で昴さんに止められた。
「えー、壊れちゃったの?」
すごく嬉しくて、すごく大事にしてたのに。
「――そんな顔しないで。Aさんのせいではないですし、私もちっとも気にしていません。そうだ、明日新しいものを一緒に買いに行きませんか?」
昴さんはそう言ってくれたけれど、壊れたスマホを見せてくれることはなかった。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年5月25日 13時