Backstage1 ページ1
悔しそうな顔で、空中をにらみ続けているコナン君の元へと急ぐ。
「コナン君――」
どう声をかけていいのかわからない。
「あ、Aさん。大丈夫だった?
僕、まさかあれが罠だなんてちっとも気づけなくて――」
コナン君は眼鏡の奥の瞳を曇らせながら申し訳なさそうにいう。
「園子さんに変装したキッドのこと?」
「そう」
コナン君に打ち合わせだと偽り声をかけた園子さんは、実は怪盗キッドだった。
あの部屋ではすでに他の人は眠らされていて、その後部屋に閉じ込められたコナン君も眠ってしまった――というのがコナン君の話だった。
――事の流れは分かったが、私の方は自白剤を飲まされて大変な目にあった、なんて子供に伝えるべきではない。事情を知っているのはどうせ、私と昴さんと、あのキザな怪盗の三人だけ。
私はコナン君に目線を合わせてにっこり笑う。
「全然。時間ギリギリまで雑談してただけよ。
あれだけお話してもぜんぜん、偽物だなんてわからなかったらほんっと怖いよね、あの怪盗」
「あ、蘭ねーちゃんの様子見に行こうかな。Aさんも一緒に行こう?」
コナン君が伸ばす手を取ろうとした瞬間、後ろから肩を掴まれた。
「私のことを置いていかないでくれますか?」
ふわりと耳に柔らかい声は昴さんのものだった。
「わ、昴さん?」
私はびっくりして首をかしげる。てっきり特別展示室を出た後は、はぐれたかとばかり思ってた。
目を丸くする私を、昴さんはいつもと変わらぬ穏やかな笑みで私の頭をくしゃりと撫でる。
「怪盗やボウヤのことばかり見て、すっかり私のことを忘れているんですから」
「そんなことないよ、全然」
慌てて昴さんの腕をとり、ほんの一瞬、私たちのやりとりには付き合っていられないようなあきれ顔を見せた後で素早く駆け出したコナン君の背中を追った。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年5月25日 13時