Call Spade4 ページ20
「Aさん、面白い本でも持ってきましょうか?」
私がずーっと飽きずに昴さんを見つめ続けているので、ついにあきらめて私に視線を戻した。
――ほら、人の視線を感じてないわけじゃないでしょ?
「いらない」
ここなら、一方的にずーっと眺めていても何もされないもん。家みたいにキスの雨が降ってくることも、気まぐれにベッドに連れていかれることもなくて、平和。
もちろん、その時間がいやってことは全然なくて、それはそれでむしろ好きなひとときではあるけれど。
でも、体の熱を上げすぎず、理性をはじめとしたあれこれが溶けすぎない、ふわっとした距離感で、幸せに浸っていたいこともあるよね?
ご主人様が仕事を始めるとすかさずパソコンに乗って存在感をアピールする猫みたいに、私も存在感をアピールしたい。でも、さすがに新聞の上に飛び乗るわけにはいかないので、こうして少しだけ離れたところでひたすら彼を眺めているのだ。
昴さんが大量の古い新聞の束を運ぶために立ち上がるので、私もつられて立ち上がる。
「Aさん。これ以上煽るなら、人目のないところに連れて行ってイイコトしてあげましょうか?」
涼しい顔で口元に耳を寄せてそういうことを言うのは、公序良俗に反するのでは――?
顔を真っ赤にして机に伏せた私の頭を、彼がくしゃっと撫でて去っていく。
絶対に私が困る事態になるってことはないと思ってたのになあ。
あー、もう、何をどうしても勝てる気がしない。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年5月25日 13時