松田陣平にドキドキ ページ5
目が覚めたとき、ものすごく暖かくて心地よかった。
「――っ!」
それが、人の腕の中だから、と気が付くまでに少し時間が必要だった。
「A、目が覚めたか?」
瞳を開けば、ものすごく近くにじんぺーさんの首があって、脈が上がる。
「怖い?」
慌てて首を横に振った。
怖いわけじゃない。びっくりしただけ。
「良かった。しっかり眠れたみたいで」
毎晩こうしていたいよ、と、ややかすれた低い声で言うと、優しく私の髪や背中を撫でるから恥ずかしくて余計に視線があげられない。
「頭痛くない? 昨夜のませすぎたかもって」
「ああ、ううん。お酒には多分強い方だと思う」
ふと、視界に入った髪色は従来の私のものだった。
「ケンジさんは?」
「仕事に行った」
「ジンペーさんは?」
「いつも危険な目に合う可愛い女の子のボディガードで手一杯だな。うん、目下仕事中」
なんていって、くすりと笑う。
吐息が頭に触れてくすぐったい。
「昨夜、安室さん来なかった?」
「さあ? A、知ってた? ベッドの中で他の男の名前を口にしたら、オオカミに食べられるって」
耳元でくすりと笑うから、ドキッと心臓が跳ねる。
だめだ、これはとても良くない。
私はすごくくすぐったくってふわふわした気持ちになっていて――。
どうしよう。今の状況は全然嫌じゃない。
「よかった。オオカミがここに居なくて。
ジンペーさんは人間だもんね」
「どうかな? 試してみる?」
ちゅ、と、唇が頭に触れたのを感じて脈拍が跳ね上がる。
ぎゅっと、ジンペーさんの腕を掴んだ理由は自分でもよくわからなかった。
「ゼロのところにいるのがいやならここにいればいい――。俺はいつでも大歓迎だ」
「それは――っ」
なんて答えたらいいのか、よくわからなくて、私は言葉を探す。
ピンポン、ピンポン、と、しつこく続く呼び鈴の音が甘い時間の終わりを告げた。
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作者名:まつり | 作成日時:2023年1月29日 16時