9グラム【NoSide】 ページ10
Aは狭いベッドの上で沖矢に寄り添ったまま器用に眠ってしまった。
「傷はどうなんだ、赤井」
それまで、パイプ椅子に座り手持ちのノートPCであれこれ指示を出していた降谷は、手を止めずに問う。
さっきから積極的に使っているのは右手。Aを抱き寄せる時も傷に触らぬようにしていることが、降谷にはすぐにわかった。
沖矢は皮肉気な笑みを見せ
「痛むがまあ、心配ない。治る程度の傷だよ」と言う。
「悪かったな、降谷君。車が飛び込んでくるのが見えて一人なら避け切れたんだが、そうすると通行人に被害が出るところだったんでね」
「ええ、ヘリコプター代をFBIに請求したいくらいですよ、全く。
でも、彼女のおかげでIoTテロの被害をある程度抑えられそうなので――。不問にしておきます。とにかく、命を大切にしてくれないと。ほんっとにAが取り乱して大変だったんですから――」
「そのようだな。看護師の服なんてどこで調達してきたんだか。
まさか、君の差し金ではないだろう?」
沖矢は無意識に服をまさぐって――、ああ、今は沖矢昴の姿だから煙草はなかった――と、喫煙を諦める。
「当たり前だろ、赤井秀一。悪影響にもほどがある。
服だけじゃなくて端末もその辺で失敬して情報を覗き込んでいた。
今更、Aを僕一人に押し付けようなんて思わないでくださいねっ!本当に手に負えないんですから」と、降谷は、彼らしい独特の言い回しで【死ぬなよ、赤井】という意味の言葉をぶつけた。
「ああ、わかってる。それで、IoTテロとはなんのことだ。そういえば、Aも電話でそんなことを言ってたな」
降谷はこれまでの経緯を簡潔に説明した。
「俺のことは気にせず、仕事に戻ってくれ」
「そういうわけにはいきません。彼女、見てのとおり情緒不安定甚だしいんですから、今のあなた一人の手におえるとはとても――」
Aはほんの半年前まで、気軽に恋人をとっかえひっかえしていて執着など微塵も見せなかったというのに、この代わりぶりは、いかがなものか。
「そうだな、でもまあ――人間らしくてこっちの方がいい。責任を取って彼女のことは、なんとか宥めるよ。とはいえもちろん、君がここで仕事をしてくれる分には全く問題ない。車で行き来するのも危険な状態だろうからな」
「ええ、そうさせてもらいます――缶コーヒーでも飲みますか?」赤井が頷くのを確認して、降谷は部屋を後にした。
273人がお気に入り
「名探偵コナン」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まつり(プロフ) - いちごさん» ありがとうございます!前回のキッドの時とはまた違うパターンでってイメージでしょうか。承りました。 (2023年1月30日 6時) (レス) id: 6a01f04095 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 続編おめでとうございます、!この話大好きすぎてやばいです。リクエストは、ヒロインが赤井さんと降谷さん以外の男性と親しげに話していてそれにすごーく嫉妬で狂う姿が見たいです、、! (2023年1月30日 2時) (レス) @page11 id: d7cfe12389 (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - 星良さん» こちらこそ、応援ありがとうございます。リクエストありがとうございますー!いいですね。私も見たい!是非書きたいと思います✨ありがとうございます。 (2023年1月29日 17時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
星良(プロフ) - 続編おめでとうございます!! 今回も楽しく読ませていただいています✊ リクエストなのですが、、、蘇芳ちゃんが嫉妬?しているところがみたいです💦 (2023年1月29日 17時) (レス) id: 4e794d85df (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - やっちさん» やっちさん、こちらこそ、続きまで読んでもらってありがとうございますー!引き続き、よろしくお願いします。 (2023年1月28日 20時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まつり | 作成日時:2023年1月28日 15時