8グラム ページ9
白衣を着た医師とすれ違う。
零が「面会謝絶」と書いてある個室の扉に手をかけた瞬間
「こちらは立入禁止ですよ」と、先ほどすれ違ったメガネをかけたイケメン医師が戻ってきて言った。
茶色い髪に整った顔で、一見優男風の医師は、しかし思いの外力が強い。
「この中に、誰が居るんですか? どうしても知りたいんですっ!」
私は病院には相応しくないほどの大声で叫んでしまって、とても看護師の真似なんてできないことに気が付いた。
「守秘義務がありますので」
医師は表情を崩さない。
「わかるけど、でも……っ」
「大丈夫だから、落ち着いて」零の穏やかな声を聞いても、全く心が落ち着く気がしない。
「――やだ。ここに昴が居るならあわせて――、お願いっ」
どんどんと扉を叩く。涙が落ちて、脚が崩れ落ちた。
すっと中から扉があく。
「――沖矢さん!?」
医師が声をあげた。
「新出先生、すみません、色々と。
彼女なら大丈夫です。何もかも知っているので。もちろん、そちらの彼も」
頭上で聞こえるのは昴さんの声だ。
「本当ですか?」新出先生は心底疑わしそうな声を出した。
まあそうだよね、看護師の服を奪ってきているような女のことを『大丈夫』だなんて信じろと言われても難しいかもしれない。
「ええ。――ほら、おいで。ちょっと身動きが取れなくなってしまってね、新出先生に助けてもらったんだ。スマホが壊れてすぐに連絡できなくて悪かった。でも、受付で聞いてくれたらここに案内してもらえるよう頼んでいたんだがな」
ぎゅうと、昴さんは身をかがめて私を抱えあげる。
顔をあげれば、元気そうな昴さんがいてホッとする。
後ろで零が新出先生に状況を語ってくれているようだった。
「もう馬鹿っ。私はすごく怖かったんだから。――いなくなったりしないでよ。お願い――っ」
しがみついてわんわん泣く私を昴さんはぎゅうと抱きしめてくれた。
「ほら、1時間も留守番できない、だろう?」
「もう、留守番なんてしない。ずっと傍にいるんだからっ」
そうかそうかと、昴さんが笑う。
何度か唇を重ね頭を撫でられているうちに、泣き疲れた私は眠ってしまった。
「俺の恋人の愛は、存外重いようで安心したよ」――という、シュウの言葉が、眠りに落ちる直前の私の耳に飛び込んできた、ような気がした。
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まつり(プロフ) - いちごさん» ありがとうございます!前回のキッドの時とはまた違うパターンでってイメージでしょうか。承りました。 (2023年1月30日 6時) (レス) id: 6a01f04095 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 続編おめでとうございます、!この話大好きすぎてやばいです。リクエストは、ヒロインが赤井さんと降谷さん以外の男性と親しげに話していてそれにすごーく嫉妬で狂う姿が見たいです、、! (2023年1月30日 2時) (レス) @page11 id: d7cfe12389 (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - 星良さん» こちらこそ、応援ありがとうございます。リクエストありがとうございますー!いいですね。私も見たい!是非書きたいと思います✨ありがとうございます。 (2023年1月29日 17時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
星良(プロフ) - 続編おめでとうございます!! 今回も楽しく読ませていただいています✊ リクエストなのですが、、、蘇芳ちゃんが嫉妬?しているところがみたいです💦 (2023年1月29日 17時) (レス) id: 4e794d85df (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - やっちさん» やっちさん、こちらこそ、続きまで読んでもらってありがとうございますー!引き続き、よろしくお願いします。 (2023年1月28日 20時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2023年1月28日 15時