44グラム【降谷Side】 ページ49
疲れと寝不足、何より甘え上手な可愛い彼女のお陰で、思いのほか長く深く眠ってしまった。
目が覚めたときには頭がさえわたっていて、睡眠の大切さを改めて思い知る。
一緒に力尽きた可愛い子猫ちゃんは僕に抱きついたまま眠っていた。手を離すと起きてしまうのは明白なので、改めて、その華奢な身体を抱きしめなおす。
そして、やはり赤井が彼女を悲しませるような真似はしないんじゃないかと考えた。
だとしたら、あの研究室にあった煙草は僕に対するメッセージだ。わかりづらくて腹立たしいが、赤井ごときのメッセージが僕に読み解けないはずがない。
足跡を辿るには、ハッキングの事実があった研究所全てに足を運ぶべきだろう。
幸いそう件数もないし、場所は関東近辺に限られているので今日一日中あれば全部見て回れる。
そんなことを考えながら無意識にAの髪を撫でていた。ゆるやかに彼女が目を覚ます。
一瞬、自分がどこにいるのかわからない――みたいな表情をして、その後我に返って自分の目の前にいるのが僕であることを確認して嬉しそうに笑う、その一連の流れがとても好きだ。
待っていればすぐに「零おはよ、ぐっすり眠れた?」と寝起きにだけ聞かせてくれる極上の甘ったるい声で囁いて可愛らしいキスを唇に送ってくれる。
「Aのおかげだよ。参ったな……。いつもなら君が目を覚ます前に朝食くらい準備するのに」
「疲れているんだよ。たまにはゆっくり休んで。そんなに解決を急がなくてもいいよ。うん、絶対に平気。
大事件が起きたって、何も解決できなくたって、被害が広がったって、零のせいじゃないよ」
「――プレッシャーのかけ方が誰よりもえぐいよ、A」
鬼教官か、君はと言えば
「えー? 普通に気にしなくていいって言ってるだけなのに!捉え方が歪みすぎだよ!! もうちょっと寝た方がいいんじゃない?」
と言って僕の頭をわしゃわしゃと撫でまわす。
それから、ぎゅうと僕に抱き着いた。頬をくっつけて抱き着くから表情が見えなくなる。
「後悔しないようにしなきゃ……って、自分を追い詰めなくていいよ、零。私もずっと零の後悔に寄り添ってあげる」
耳元でAが小さく、でもはっきりそう囁いた。
.
それは、蒼白な顔で留学を悔やんでいた、数年前のAに僕がかけた言葉にとても似ていた。
そんな言葉の欠片を今でも握り締めてよすがにしてくれているAのことが心から愛おしい。
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まつり(プロフ) - いちごさん» ありがとうございます!前回のキッドの時とはまた違うパターンでってイメージでしょうか。承りました。 (2023年1月30日 6時) (レス) id: 6a01f04095 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 続編おめでとうございます、!この話大好きすぎてやばいです。リクエストは、ヒロインが赤井さんと降谷さん以外の男性と親しげに話していてそれにすごーく嫉妬で狂う姿が見たいです、、! (2023年1月30日 2時) (レス) @page11 id: d7cfe12389 (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - 星良さん» こちらこそ、応援ありがとうございます。リクエストありがとうございますー!いいですね。私も見たい!是非書きたいと思います✨ありがとうございます。 (2023年1月29日 17時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
星良(プロフ) - 続編おめでとうございます!! 今回も楽しく読ませていただいています✊ リクエストなのですが、、、蘇芳ちゃんが嫉妬?しているところがみたいです💦 (2023年1月29日 17時) (レス) id: 4e794d85df (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - やっちさん» やっちさん、こちらこそ、続きまで読んでもらってありがとうございますー!引き続き、よろしくお願いします。 (2023年1月28日 20時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2023年1月28日 15時