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23グラム ページ27

「正解」

「ち、ちなみにお名前は――?」

違えばいいのに、と思いながら聞いてみたけど

「羽田秀吉。先日の勝利のお祝いにシャンパンを持って行ったところだ」とこともなげに言う。

なるほど。ニュースで良く彼のことをチェックしていたのは、将棋に興味があると言うより実の弟の勝負の行方が気になったからってわけなのね。

っていうことは、秀吉さんは、お兄さんが生きている上に沖矢昴であるってことまでご存じなわけですね――。

え――。ちょっと待って。

なんでそんなものすごく身近に知っている人が現れるわけ?

私は昨日、由美さんと話したあれこれを思い出して、青ざめそうだった。

「どうして零が秀吉さんのことを知ってるの?」

棋士に公安の人がお世話になることなんてあるんだろうか。

「それがね――」と、零は空になった皿を手際よく片付けながら、夏に某国に行ったときに、偶然秀吉さんに会って、私の居場所を聞いたことを教えてくれた。

――それ、今言う?

もっと別のタイミングで教えてくれても良かったんじゃ……。

「あれ? でも、由美さんは私に夏休みに偶然会ったよねー? 大丈夫だった? なんて言ってこなかったけど」

「彼女は二日酔いだったらしくて、あの時のことを微塵も覚えてないらしい」とシュウが言う。

それなら、由美さん昨夜の話も全部忘れてたりは――しないよね。

残念ながら昨日はそれほど飲んでいない。

私が昨夜由美さんに語った愚痴を(おそらく秀吉さん経由で)、シュウがきいてしまったからこそ、「夕食を全部食べ終わったら、こっちにおいで、Kitty」と、最近全然私に向けて使わなかったような色気のある声で私に話しかけてくるんだろうし――。

一方、昨夜のことを反省している零が、シュウのことを止めるわけもなく。

「片付けなら僕に任せて」と、零からは触れるだけのキスが降ってくるし、私はもう、グラスの中の赤ワインを飲み干してシュウのところに行くほかなさそうだった。

行かなくてもたぶん、さらわれるだけだ。

ここは私の家だし、他にどこにも逃げ場はない。

招かれるまま、彼の膝の上へと座る。至近距離で香る煙草の匂いは既に、懐かしいほどだった。

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まつり(プロフ) - いちごさん» ありがとうございます!前回のキッドの時とはまた違うパターンでってイメージでしょうか。承りました。 (2023年1月30日 6時) (レス) id: 6a01f04095 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 続編おめでとうございます、!この話大好きすぎてやばいです。リクエストは、ヒロインが赤井さんと降谷さん以外の男性と親しげに話していてそれにすごーく嫉妬で狂う姿が見たいです、、! (2023年1月30日 2時) (レス) @page11 id: d7cfe12389 (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - 星良さん» こちらこそ、応援ありがとうございます。リクエストありがとうございますー!いいですね。私も見たい!是非書きたいと思います✨ありがとうございます。 (2023年1月29日 17時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
星良(プロフ) - 続編おめでとうございます!! 今回も楽しく読ませていただいています✊ リクエストなのですが、、、蘇芳ちゃんが嫉妬?しているところがみたいです💦 (2023年1月29日 17時) (レス) id: 4e794d85df (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - やっちさん» やっちさん、こちらこそ、続きまで読んでもらってありがとうございますー!引き続き、よろしくお願いします。 (2023年1月28日 20時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まつり | 作成日時:2023年1月28日 15時

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