31グラム ページ36
――私だってそう思っていたけれど、当の怪盗本人が否定するんだから仕方ないでしょー? と思ったが、そう口に出すわけにもいかないので
「いや……まあ、そうですよね。
業界内の人間は理解していると思うんですが、末端ユーザーのイメージとかどうかなぁと思ったもので……。
種も仕掛けもあるに決まってますよね」
と、適当に調子を合わせたうえで、
「実は、沖矢さん、鈴木財閥のご令嬢とつながりが深いんです。そこからコネクションを作れる可能性がありますけど、どうします?」
と、切り込んでみた。
「いや、蘇芳君絡みのコネクションなら大歓迎だ。いつも面白いところにつないでくれるから、期待しているよ。
沖矢君にはインターンシップの期間が終わっても、会社に残ってもらえるよう言っておいてくれ」
「は? いやいやいや……。沖矢さん、きっと大学の方が忙しいんじゃないですかね……?」
と言って社長室を後にする。
大学院はどうでもいいとしても、FBIの仕事が忙しいに違いない。
――忙しいよね? 忙しいって言って?
そう願ったのもむなしく、その日の午後社長はわざわざ私の部屋までやってきて、沖矢昴にインターンシップが終わってもうちに自由に出入りしていいとか言い出すし、本人も乗り気でそれを引き受けるからうんざりする。
――なに、何の動揺もなく、就職も検討するとか言ってんの?
あなたの本拠地はアメリカ、仕事はFBIでしょー?
だめだ、まともに取り合っているとこっちがどうにかなりそうだ。
私が頭を抱えて自分の仕事に戻りはじめたとき、社長はおやと首を傾げた。
「おかしいな。蘇芳君が喜んでくれると思って提案したんだが……」
「私はこうみえて、公私は分けたいタイプなんです!」
――しまった。半分仕事のことに気を取られていて今、ものすっごい失言をしたのでは……?!
プライベートで沖矢昴と付き合ってますって社長に公言しちゃったよね、今、私!
「ふむ、なるほど。公私――ねえ。聞かなかったことにしよう。
鈴木財閥のためならいつでも時間を空けるので、決まり次第こちらの電話に連絡をくれ」
察しの良い社長が聞き逃すはずもなく、意味深な笑いを浮かべた後部屋から出て行って――
昴さんはとても嬉しそうに「ようやく私の気持ちを受け入れていただいたようで良かったです」と言ってくるし、私は頭を抱えるほかなかった。
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まつり(プロフ) - いちごさん» ありがとうございます!前回のキッドの時とはまた違うパターンでってイメージでしょうか。承りました。 (2023年1月30日 6時) (レス) id: 6a01f04095 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 続編おめでとうございます、!この話大好きすぎてやばいです。リクエストは、ヒロインが赤井さんと降谷さん以外の男性と親しげに話していてそれにすごーく嫉妬で狂う姿が見たいです、、! (2023年1月30日 2時) (レス) @page11 id: d7cfe12389 (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - 星良さん» こちらこそ、応援ありがとうございます。リクエストありがとうございますー!いいですね。私も見たい!是非書きたいと思います✨ありがとうございます。 (2023年1月29日 17時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
星良(プロフ) - 続編おめでとうございます!! 今回も楽しく読ませていただいています✊ リクエストなのですが、、、蘇芳ちゃんが嫉妬?しているところがみたいです💦 (2023年1月29日 17時) (レス) id: 4e794d85df (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - やっちさん» やっちさん、こちらこそ、続きまで読んでもらってありがとうございますー!引き続き、よろしくお願いします。 (2023年1月28日 20時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2023年1月28日 15時