17グラム ページ20
翌朝――といっても10時過ぎていたけれど――目が覚めたら、珍しくすぐ隣に零がいた。
「ポアロは?」
「ポアロはしばらく休んでる。どうせ平日顔を出すのも無理だし」というと、肩をすくめて私を自分の胸の上にひきあげた。
「重くない?」
「全然」手の平や指先が私の頭や背中を大事そうに撫でていく。
「A昨日は無理させて悪かった。嫌われたくないのにどうして逆のことばっかりしてしまうんだろうなぁ」……と独り言ちた。
「反省してる?」
「もちろんだよ」こつんと私と額を合わせて至近距離で瞳を見つめ、反省している――何かして欲しいことはある? と、柔らかい声音で問う。
「だったら零の今日一日を私に頂戴」
私は彼の金色の髪に手を伸ばしてくしゃりと撫で、頬にキスをする。
零は瞳を丸くした後、ふわりと笑った。
「もちろん――。何がしたい?」
「可愛い秋の服を着て、デートに行きたい。いっぱい話ができるところがいい」
美術館とか映画じゃなくて、もっとがやがやしたところに行ってみたい。
「わかった。任せて」
君は着替えておいで、朝食を温めなおすと言うと優しいキスをして私の頭を撫でた。
.
寝室を出ると、ソファで眠っていたのは赤井秀一だった。
私が部屋で着替えて戻ってきた時には既に起きていた。
おいでと手を伸ばすので、素直に傍に行く。
「シュウ。いつ帰ってたの?」
「今朝がた――」何か言いたげな眼差しに慌てて目を逸らす。
仕事中の零が受けた電話のことだって知っているかもしれないし、知らなくたって、帰宅時の玄関の乱れ具合から何かを予想するなんて彼には朝飯前に違いない。怖い。
唇を耳に寄せ「大丈夫か?」と心配そうに聞いてくるのも、あえて彼の手が優しく私の腰を撫でるのも、気づかないふりでキスだけを返す。
ここで何を話しても、キッチンにいる零に聞こえないわけがない。
「今日は零とデートしてくるから、一緒に遊べないの。ごめんね」
「それは明日一日俺とデートしてくれるっていう誘いだと思っておいたらいいのか?」
相変わらず、どうして言葉がそう歪んで理解できるのかよくわからない。
でも、デートできるならそれはそれでいいよね。
「時間を空けてくれるの? じゃあ、いっぱい話ができる所に連れて行ってね?」
「了解」
私はフレンチトーストの甘い香りが漂う、キッチンへと向かって朝食を取ることにした。
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まつり(プロフ) - いちごさん» ありがとうございます!前回のキッドの時とはまた違うパターンでってイメージでしょうか。承りました。 (2023年1月30日 6時) (レス) id: 6a01f04095 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 続編おめでとうございます、!この話大好きすぎてやばいです。リクエストは、ヒロインが赤井さんと降谷さん以外の男性と親しげに話していてそれにすごーく嫉妬で狂う姿が見たいです、、! (2023年1月30日 2時) (レス) @page11 id: d7cfe12389 (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - 星良さん» こちらこそ、応援ありがとうございます。リクエストありがとうございますー!いいですね。私も見たい!是非書きたいと思います✨ありがとうございます。 (2023年1月29日 17時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
星良(プロフ) - 続編おめでとうございます!! 今回も楽しく読ませていただいています✊ リクエストなのですが、、、蘇芳ちゃんが嫉妬?しているところがみたいです💦 (2023年1月29日 17時) (レス) id: 4e794d85df (このIDを非表示/違反報告)
まつり(プロフ) - やっちさん» やっちさん、こちらこそ、続きまで読んでもらってありがとうございますー!引き続き、よろしくお願いします。 (2023年1月28日 20時) (レス) id: 40409137ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まつり | 作成日時:2023年1月28日 15時