敵の敵9―降谷side― ページ43
ミステリートレインの貨物車に火薬が積まれているなんて思っても居なかった。
報告や後処理など、ミステリートレインの後片付けもそれはそれで面倒だった。
鉄橋が壊れたせいで、公安の方でもあれこれ動かなきゃならなかったし――。
列車の所有者が鈴木財閥、その力が絶大で本当に良かった。
あれが普通に列車ならより一層大変だったと思うと気が重かった。
「その場に居た僕が証言します。テロの可能性はゼロ」って報告するわけにもいかないので、それなりの捜査と報告が必要になるわけで。
名古屋でジンが僕やベルモットごと列車を破壊するつもりだった気づいたのも、なかなかヘビーな話だった。
――しかし、あの時に手りゅう弾を貨物車に投げたのは、誰なんだ――。
思い出そうとすると心の奥がざわっとする。
その直前、シェリーがライのことを思い出させたせいだ。
けれども、今、Aが赤井秀一と一緒に居るというのなら、あのタイミングで日本いて、ミステリートレインに乗車していたとしても不思議ではない。
でも、赤井が亡き恋人の実妹であるシェリーをわざわざ殺すとは考えづらい。
そもそも、僕が名古屋での爆破について知らなかったのに、赤井が知っているということがあるんだろうか。
盛大なトリックにでもかけられているような気がして、気分が悪かった。
一方で、Aが赤井と一緒に居ると聞けば、無条件で彼女の身の上を安心してしまう自分もいるわけで。(だって、赤井が傍に居てAを危険な目に合わせるわけがない。万が一の場合は身を挺してでも守ってくれるはず。)
相変わらず、赤井が絡むと冷静さが保てなくなるということだけが事実として存在していた。
.
沖矢昴が赤井秀一ではないのか――。
最初にそう思ったのは、沖矢とAが一緒に歩いている姿を見たときだった。
身長差が酷似していた。
でも、ただそれだけだ。
Aの態度は明らかに赤井に対するものとは違うし、沖矢の振る舞いにも赤井らしさはない。
それでも何かが引っかかって仕方がない。
違うなら違うでいい。真実を確認したいと思って、沖矢昴が居候していると聞く工藤邸に足を運んだのは、とある金曜日の夕方だった。
121人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まつり | 作成日時:2022年11月25日 12時