敵の敵8 ページ42
木曜日の午後。
「フルヤ様からお電話です」と内線が入ってきてどきりとした。
「もしもし――?」
「僕だ。君のスマホにつながらないのは彼の嫌がらせか?」
おそらくその話し方は、降谷零。
そろそろ公安に仕事復帰できたのかもしれない。
「うん。嫌がらせ。私のスマホ取り上げられたから連絡できないの」
私はやむなく事実を伝えた。
私のスマホはシュウの手元にある。連絡が入れば転送するって言ってたけど、どう考えても零の連絡先は着信拒否にしてるよね、これ――。
もしかして、他の誘いも勝手に断ったりしてないよね? 急に心配になってきた。
ちなみに、私の手元にあるスマホはシュウが新しく買ってくれたものだし、そこに入っている電話番号は、シュウとキッドのものだけだ。
――なんでこんなことになっているのかは、私が知りたい。
キッド君はもちろん、朝から学校に行っている――はず。
「……珍しいな、君が普通に話すなんて。会社、だよな?」
零が首を傾げているのが手に取るようにわかる。
「もちろん、そうだよ。諸事情あって、私個室もらったの。話したいことがいっぱいあるんだけど――。まだ忙しい?」
「いや、ようやく家に――。とはいえ、またすぐ忙しくなるのは分かっているから――」
言葉尻を濁すから、不安になる。
「何? まさか電話で別れなんて切り出さないよね? そんなの嫌だよ。
あの人だってどうせ今暇なだけで、一生このままってわけでもないんだろうし。
そしたらきっと、零みたいに私のこと忘れて仕事に没頭するよ」
シュウがやたらと私を構うのは、私が正体を知っている数少ない相手で単に今暇なだけだし、若干孤独を持て余しているんだと思う。
「君のことを忘れてたわけじゃない」
大事にするっていうベクトルは人によって様々なんだよね。
何もかも教えて巻き込む方法もあれば、何も教えずに遠ざける方法もあって、どっちが正しいってわけでもない。
それで愛情の強さが計れるわけでもない。
「わかっているし、零に逢いたいよ」
電話越しに話すのは難しすぎる。
「でも、【彼】は怒ってるから、零のこと」
それこそ、勝手に零と会ったりしたら、本当に檻の中に閉じ込められるかもしれないので私からは身動きが取れない。
「仕事を作って会いに行く」
「ダメだよ。あなたは表舞台には出ない人だって風見さん言ってたもん」
「余計なことを――」と呟くのが電話越しに聞こえてきた。
元気そうで良かった。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年11月25日 12時