トラップ4 ページ30
目は覚めたが、何曜日の何時なのか全然わからない。
身体を起こしてタブレットを見ていたシュウに手を伸ばすことも躊躇してしまうほどの気だるさだ。
見覚えのあるパジャマが着せてあるところをみると、やっぱりここは工藤邸なのかもしれない。
彼は気配で私が目覚めたことに気が付くと、煙草を消し、タブレットをベッドのわきに置いて、私の傍にくる。
「ね、今何曜日の何時?」
「日曜日の朝8時前だ」
警戒してビクッと震える私の頭をそっと優しく撫でると、「心配しなくても、君の好きなハグしかしない。おいで。昨夜は無理をさせすぎたと反省もしている」と甘い声音で囁いて、ベッドにもぐりこみ、私を腕の中にそっと閉じ込める。
私の警戒心が溶けるまで、丁寧に髪や背中を撫でては、そっと鼻や唇に、触れるだけのキスを落としてくれるシュウは――私の大好きなシュウ――だけど。
「……まだ怒ってる?」
「君に対しては、最初からそう怒ってない――でも、俺を淋しがらせたのは君の責任だ」
「淋しいって……!」
シュウには似つかわしくない言葉だ。
「俺に結婚をせがんでくれたから、君のことはフィアンセどころか、妻だとさえ思っているのに。
ひどく他人行儀だし、俺には会えないと言いながら他の人には振り回されっぱなしだし……。元彼と交流を深めるし、有希子さんの言いなりだし、怪盗に唇を奪われるし――」
しまった。この話は、ベッドでするべきじゃない。
「ね、シュウ。私コーヒー飲みたい。お腹もすいた。朝ごはん、食べよう? ダイニングにその姿で行けないなら、用意してここに運んでくる。――それとも着替える?」
慌てて腕から抜け出して体を起こす私を見て、シュウはくすりと笑う。
素直に抜け出させてくれたところを見ると、今日は本当にあんなことをするつもりはないのだ――と思いたい。
そういえば、有希子さんはいるのだろうか。
「有希子さんは?」
「昨日、君が眠っている間に戻ってきて、あわただしく帰国していった。見送りは不要と言われたので、お言葉に甘えさせてもらったよ」
――俺は、君を一人にしたくはないんでね、と、皮肉のこもった口調で付け加える。
「もしかして、零に対して怒ってる?」と問えば
「当然だ」と返答が来た。
2人で直接もめて欲しいような、それもまた面倒なような――。
このややこしい三角関係をいっそリセットする方法が知りたいけれど、私なんかではとてもじゃないけど太刀打ちできそうにない。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年11月25日 12時