ミステリートレイン17 ページ24
キッド君が告げた哀ちゃんの居場所は、沖矢さんから指示された場所と一致していた。
そうか、哀ちゃんは早くもそこにたどり着いていたのか……。
良かった。
私はほっとして、気が抜けたように椅子に座り込んだ。
火事はきっと、誤報だからここにいても大丈夫だよね。
しばらく話していたキッド(10代後半の哀ちゃん)と零(バーボン)はの2人は、8号車の向こうの貨物車へと行ってしまった。
すごく心配だけど、私が追いかけていけば、コナン君の作戦が台無しになる。
このタイミングで、哀ちゃんのいるところに行ってもいいんだけど、そういうわけにもいかないよね。
おそらく、イヤフォン越しにキッド君に指示を出しているんだろうし、邪魔はしたくない。驚かせたくもない。
――困ったな。
マスミは無事だっただろうか。
列車内、火事が誤報だってわかったら人が帰ってくるのかな。
私は閉め切ってない扉の隙間からそっと外を覗く。
無人だと思い込んでいた廊下に人影を見かけてぎくりとする。
あのシルエットは、私が今日一日目について仕方がない、例の40代くらいの男だ。
ここで何をしているのか――。
私はレッグホルスターから拳銃を取り出して呼吸を整える。
もちろん、私が勝手に気になっているだけでなんでもない一般人かもしれない――けど。
8号車は火災だと騒がれているのに、一般人がここに居るとは思い難い。
部屋を出ようと呼吸を整えた瞬間、扉の向こうから手が伸びてきて叫びそうになる。
私の口を大きな手が覆い、耳元に唇が寄せられた。
「俺に任せて。君はここで待っていて」
短く小さく囁かれて、扉は静かに閉じられた。
今の、沖矢さんの声だった、よね?
ドキドキが止まらなくて、膝に力が入らなくて、床に崩れ落ちてしまう。
どれくらい時間がたったのか――。
おそらくそれほど時間は立ってない。
すぐ近くで鳴り響いた空気をつんざくような轟音で我に返った。列車に強い振動を感じてどっと汗が出る。逃げなきゃ、と、強く思うものの、体のどこに力を入れれば立ち上がれるのか、よくわからなかった。
何が……起きたの?
本当に、待っていて大丈夫?
シュウと零は――キッド君は――哀ちゃんとコナン君は――、乗客の人達は、無事なのかしら。
気になることが多すぎるが身体は思ったように動かない。
私はなんとか長椅子の傍まで這っていき、立ち上がろうとしたタイミングで扉が開く。恐怖が体中に走り、無意識のうちにぎゅっと目を閉じていた。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年11月25日 12時