ミステリートレイン15 ページ22
小学生目線で隠れられるところって、きっと大人より多いよね――。
一通り通路を歩いて、食堂車を見て回る。
お手洗いにはさすがに踏み込めないし、そもそも、どこかの部屋に入り込んでいたら開けて回るわけにもいかないし、参ったな。
8号車をちらりと覗いてみたけれど、いまだに推理ショーをやっていた。
安室さんが謎解きの一端を担っていて思わず耳を疑った。人ごみに紛れて姿が見えなくて本当に良かった。
――もっとも、零はきっと私の姿を見ても動揺なんてしないと思うけど。
さて、哀ちゃんはどこだろう。
見当たらないということは、やはりどこかの部屋に入って匿ってもらっているのだろうか……。
私は食堂車で立ち止まる。
ふいに、細身の黒服が目に止まった。彼の姿に、妙にデジャブ感を感じて慌てて顔をそむける。
相手は外の景色に目をやり、私になんて興味がないようで助かった。
そう言えばあの人、さっきも見たよね――。
男は向こうから歩いてきた沖矢さんとすれ違う。
頭の高さが丁度、沖矢さんの肩くらい。
私はそれを見届けた後、沖矢さんとは逆方向に向かって歩くことにした。すれ違ったが言葉は交わさない。
頭の中は、あの黒服の細身の――おそらく年齢層も40代を超えて居そうな男のことで頭がいっぱいだった。
そうだ、あのシルエットは、毛利探偵事務所の前で見た男に体形がとても似ている。
背の高さは丁度、沖矢さんの肩の高さに頭がくるくらい――
零はどうしてそのことを毛利探偵に伝えていないのか不思議だったけれど、「組織の関係者の仕業だから、あえて隠蔽している」と考えればしっくりくる。
「あ? え?もしかしてAおねーさん? こんなところで何しているの?」歩美ちゃんから声をかけられた。
「一瞬蘭おねーさんかと思ったけど、Aおねーさんだよね? 哀ちゃん見なかった?」
「見たよ。ちょっと具合悪いから休みたいって言ってた。私が付き添っておくから、皆には黙っていてくれる?」
「え? そうなんだ……。うん、わかった。
そういえばさ、群馬のキャンプで私たちを助けてくれたお姉さん、今毛利探偵たちが探してくれているんだよー。
ネット公開したって言ってたから、早くわかると良いな。
あのおねーさんもきっと、この列車に乗ってるんだよね? 全然出会えなくてがっかり。降りる時に会えるかな?」
なんて、ものすごく無邪気にとんでもないことを言うので、私は顔を引きつらせないのが精一杯だった。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年11月25日 12時