ミステリートレイン7 ページ14
甘いキスも手の動きもほんの一瞬だった。
沖矢さんは私のスカートを整えると唇を離す代わりに私の口を大きな手で覆い耳元で囁く。
「叫ぶと人が来る。君が困るだろう?」
そう言われるとどうしようもないので、私はこくりと頷くほかない。
いい子だ、と、私を褒めて頭にキスを落とすこの人は、声も顔も違うのに、もう、赤井秀一にしか見えない。
彼はもう一度私のスカートの中に手を滑らせる。
一瞬、ひんやりと冷たいものが肌を掠めて、びくりと身体が震えた。
「ほら、出来た。ここにつけておけば外から見えない。ただ、取り出すときに気を付けて。
おや、――真っ赤になって。イケナイことでも期待してた?」
彼が、私の脚に手早くレッグホルスターをつけて、そこに拳銃をしまいこんだのだ。
ほんと恥ずかしい。耳まで赤くなっていることは指摘されなくても顔の熱さでわかる。
「……き、期待するわけないでしょ?」
驚きすぎただけだもん。
と、思いたいけど上ずった声を今更訂正もできないし、本当にいい加減にして欲しい。
「それは残念」
全く残念ではなさそうに、沖矢さんはにっこり笑う。
「あのね、ちゃんと事前に言葉で説明して?」
「そうか。てっきり君はサプライズが好きかと思っていたが。
では、今後はそうしよう。――キスしていい?」
「い……っ 良いわけないでしょ?」
時と場合を考えて欲しい。
「ほら。事前に言葉で説明すると話がこじれる」
俺のお姫様は気難しいなというと、額にちゅっと唇をあてて立ち上がった。
「では私はこれから有希子さんを探してきますね」
耳まで赤い顔でここから出られるわけもなくて、私は沖矢さんを見送るほかなかった。
.
この列車、全部で何両だっけ?端から端まで歩いてどのくらいかかる?
3分、5分と流れる景色を見ながら静かに待っていたが、2人が全然帰ってこないので、だんだん心配になってきた。
だいたい、この列車はどうして危険なんだっけ。
結局肝心なことは何一つ聞いていない。
哀ちゃんの説得って何?
一人静かに、あれこれ考えていたら不安がこみあげてきた。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年11月25日 12時