ミステリートレイン4 ページ11
頭を整理したかったけれど、発車時間も迫っているし心配かけるわけにもいかないので部屋に戻るしかなった。
スーツケースが運ばれているし、沖矢さんと美女が向かい合って座っている。
このスーツケースには何が入っているんだろう。
私は若干迷ったが沖矢さんの隣に座ることにする。
彼は当然のように私に窓際を譲ってくれた。
「無事に帰ってこれて良かった」と、初めてのおつかいに成功した子供を見つめるようなまなざしで沖矢さんが微笑んだ上に頭を撫でるからドギマギする。
いくらなんでもいい年の大人が、列車内で迷子になるはずもない。
心配しすぎだし、向かいの席に座っている美女は、あらあら仲が良くて羨ましいわとうっとり微笑むのもどうかと思う。
「ご心配なく。いくら私でも、場所くらい覚えています。
ところで、有希子さん、ですよね？」
有希子さんには見えない。
さすが、赤井秀一を沖矢昴に変えるだけあって、ご自身の変装も上手い。
「そうよ、だって騒がれると面倒でしょ？ 本当はAちゃんももう少し変えてあげたいんだけど、それだとちょっと警戒されちゃうだろうから難しいのよね。
とりあえず気休めに外を歩くときはサングラスくらいかけておく？
でもまあ、後ろ姿は蘭ちゃんと勘違いされてもおかしくないから安心してね」
サングラスは素直に受け取ったけれど、「安心」の意味は分からない。
「有希子さん、今日、私を誘ってくれた理由はなんですか？このトレインで何があるんです？」
沖矢さんの話もまだ途中だ。
「あら、どうかした？ 赤井さんが余計なことを吹き込んだんでしょう。
Aちゃんのこととなるとやたら過保護になるんだから。英理のところから直接連れてきたのは正解だったわね。家からだったらあなた、絶対に反対していたでしょう？
可愛い子には旅をさせよって言うじゃない。
英語だと、Spare the rod and spoil the child.(鞭を惜しめば子供を駄目にする)よね？」
何それ怖い。私はダメな子供のままでいいです。そっとしておいて。
って、一瞬うっかり真に受けそうになったけど、そもそも私とシュウは親子関係ではないし、私はとっくに成年だ。
.
それはさておいて。
――なるほど。有希子さんの場合、薬で小学生になってしまった我が子を日本においてアメリカで暮らせるくらいだから、子供の信用度と旅のさせ方は桁違いだ。
でも、要所要所でちゃんと動いているよね。
ロンドンに飛んでみたり――
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作者名：まつり
| 作成日時：2022年11月25日 12時
