キャンプの付き添い5 ページ3
本当は哀ちゃんと話がしたかったのだけれど、子供たちの付き添いを優先するほかなく、私は山村警部に聞いて子どもたちを病院に連れて行った。
コナン君は哀ちゃんと一緒にテントで一晩過ごすと連絡があった。
「哀ちゃんに変わってくれない?」と頼んでみたが
「悪い、Aさん。灰原、もう寝ちゃってるから」と取り付く島がない。
私も等身大の哀ちゃんとじっくり話がしたかったんだけどなぁ――残念。
「わかったわ。哀ちゃんのことよろしくね。
ねぇ、コナン君。最近毛利探偵事務所に空き巣が入ったとか、入りそうだとか、事務所の鍵を変えた、なんて話を聞いてないかなぁ」
「ううん!初耳なんだけど。何それ、どういうこと?」
「あ、ううん。私の会社の近くの探偵事務所でそういう話を聞いたから、もしかして都内全域そうなのかなって思っただけ。違ってたらいいんだ。変なことを聞いてごめんね」
.
子どもたちは幸い、煙を吸い込んだなどの問題はなさそうでほっとする。
事情聴取を受けた後、旅館でゆっくり休むことにした。
それにしても、子供たちは命からがら炎の中から抜け出したというのに、びっくりするくらい元気で、これといった動揺も感じられなかった。
もちろん、今日遺体を見たマスミだって同様だ。
けろりとしている。
もしかして、私が繊細過ぎるんだろうか――。
布団を並べて仲良く眠る子供たちとマスミを見た後、私はベランダに出て缶ビールを開ける。今朝、気まぐれに買った煙草を取り出して火をつけた。
もちろん、シュウが好んで吸うような重たいヤツじゃない。特に美味しいとも思わない。
でも、胸の中のもやもやが煙になって溢れていくような錯覚を覚えるには十分だった。
どうして、零は私に嘘をついたんだろう――。
今日、ポアロに居ることだってそうだし。
毛利探偵に不審者についての情報を入れていないことだって――
鍵を変えていないってことは、毛利探偵は不審者の情報を知らないと考えてもいいんだよね。
それとも、零は約束通り、不審者情報を伝えたけれども毛利探偵が何の手も打っていないということなんだろうか……。
わからないことばかりで、嫌になる。
誰に相談すればいいのかすらもわからずに、私はただ、重たいため息の代わりに細い紫煙を吐き出し、ビールをごくりと喉の奥へと流して、明日の帰宅に備えてゆっくり眠ることにした。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年11月25日 12時