秘密の開示3 ページ47
哀ちゃんは黙り込んでいる。
「さて、では私がどうしてこの話を今日突然哀ちゃんにしようと思ったか。
一番気になるところはそこよね。
だってアニメみたいな話だから知らないって一笑にふせばそれで終わることなのに。蒸し返した理由が知りたいでしょう？
それは、私が先日偶然にも【黒い服】に身を包んだいかにも怪しそうな人たちを目にしたからよ。
例えば、そうね。
銀色の長い髪をした、目つきの悪い長身の男とか。
金色の長い髪を持つ、スタイルの良い美女とか」
美女であることを確認したのはユカちゃんであって、私が目にしたのは彼女の後ろ姿のみ(しかも写真のみ)だけど、まあそのくらいのデフォルメは許して欲しい。
「――っ！！」
哀ちゃんの顔が恐怖に歪む。
「もっとも、私は遠くからその姿を見ただけだから、相手には気づかれてないと思うわ。
ただ、ああいう【黒い服】に身を包む人たちを目の当たりにした場合コナン君が【黒ずくめの組織】と名付けるのもわかるな、って思ったの。
その人たちがそうなのかどうなのかは知らないけれど、リアリティがあってね。
だから、もしも私が知らないうちにその世界に徐々に近づいているのであれば――。もうこれは、私に話をしてくれる人を探すしかないよね」
「そうでないことを祈りたいわ。お姉さんには傍観者で居て欲しい。だめよ、こっちにきては」
と、哀ちゃんは震える声で小さくいった。
「きっとお姉さんが見たのは、ジンとベルモット。もしかしたら近くにウォッカもいたかもしれないわね――全員、組織の幹部よ」
くらりと頭が痛くなる。
「ごめん、今何て言った？ それは全部お酒の名前なんだけど……？」
いや、ジンって名前は普通に存在するからそれ単独ではお酒だとは思わない。
「そうなの。組織の幹部は皆、コードネームにお酒の名前を使っているの。
ちなみに私は――」
え？ 何それ。哀ちゃんも幹部なの？ 謎のコードネームついているの？
元の姿は10代じゃないの？ ――いや、シュウの情報が間違っている、あるいは私にあえて真実を隠しているという可能性もあるか……。
私は慌てて彼女の唇の前に手を伸ばした。
「Stop! その先は言わないで。知らない方が守れる世界もある」
「――そう？」哀ちゃんは首を傾げたがそれ以上は語らなかった。
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作者名：まつり
| 作成日時：2022年11月8日 10時
