秘密の共有13【赤井side】 ページ41
ボウヤに犯人が組織関係者であると伝えることはできなかった。
それをするとまた、「バーボンについて教えて」という話を蒸し返すことになりかねん。
「私の方で狙撃して被害を防ぐこともできますが――」
「それはダメだよ、赤井さん。
あなたのリスクが跳ね上がる。そっちはボクが何とかする」と、とても子供とは思えぬ口調で返事が来た。
スイッチが入ると正体を隠すことを忘れてしまうのは、多分お互い様だ。
「まあ、キッドに義理はないんですが、私にチケットを融通してくれた園子さんが悲しみますので。
――この件はボウヤに預けますね」
こんなこと、子供に預けていいとはとても思えないが今の俺はFBIとして動くわけにもいかない。
俺はため息をつくとボウヤとの通話を切り、キッドにかける。
後5分だからおよそ出るとは思っていなかったが
「わざわざありがとうございます」と、抑えた早口の声で彼は電話に出た。
「彼女からあなたからの電話があれば即座に出るようにと言われていたもので。なんですか?」
なるほど、Aが先回りしてキッドに電話だけしておいてくれたというわけか。
「その屋上はライフルで狙われている。おそらく前回とは別のやつらだ。今から防弾チョッキを仕込めるか?」
「前回のことがあったので、念のため仕込み済みです。ターゲットの位置は判明しているんですか?――わかりました。今日のところは空を飛ぶのはやめておきます。万が一の時はまた助けてくださいね」
余裕たっぷりの声音で紡がれた最後の一言はおそらく、ジョークだろう。
俺は正確な場所を伝えて電話を切った。
これでもショウは中止しないというのだから恐れ入る。
ジェイムズからの留守電を聞く。
さきほど、ここで組織の末端の狙撃手を見つけたことだけ手身近に報告した。
「組織の末端だとわかっているのなら、今回は泳がせる。どうせ今からそちらに行っても間に合うまい」という返答だった。
最後にAに電話する。
「キッド君は素直に俺からの電話を待っていた。直接話したから心配はいらない。
あれは、君の入れ知恵だろう?――助かった」
そういうと、車をどこに回して欲しいか具体的に指示した。
一応ショウが終わるまで射程圏内で見守り、問題がなければすぐに車に乗って移動するつもりだ。
「次のショウにも付き合うから、今日のところは諦めて」と頼んでみたら
「キッド君の命を守るためなら仕方ないわ」と殊勝な言葉が返ってきた。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年11月8日 10時