秘密の共有12【赤井side】 ページ40
Aは特に指示もしていないのに、自分のやるべきことを言葉にして去っていった。
ビューローで誰かがそうしていたのを無意識のうちに真似たんだろうか。
とはいえ、本当の意味で危険など知らない彼女が何をしでかすのかは、俺の想像に負える範囲ではない。さほど危険ではなさそうなこの現場で、一度信じて任せてみるしかない。
問題があるようだったら、次回から対応方法を変えるまでだ。次回など、なければいいと心から思いながら俺は静かに脚を進めた。
美術館を見上げたときに、きらりとした光を偶然目にしなければ、ライフルの可能性など考えもしなかった。
――本当のところ俺がライフルでキッドを狙うならこんな近くからは狙わない。しかし、一般的なスナイパーであれば、この辺りが妥当、と言ったところだ。
しかし、それ以上近くから狙うということは、大した腕じゃない。
そのうえ――本気でキッドを仕留めようと思っている――。
何故だ? あのビッグジュエルにそれほどの価値があるのなら自分で盗めばいいではないか。
さらにこの近さで狙撃した場合、仮に狙撃が成功したとして、ここからどうやって逃げる気だろうか。
どこから撃ったかすぐにはバレないとでも?
あまりスマートとは言えないやり口だ。
犯人の程度が知れるというものだ。
前回、キッドを狙ったのは新人警官だとニュースで言ってなかったか……。
しかし、あの雰囲気はとてもじゃないが警官が醸し出すものではない。
さて、ここからなら犯人の姿が捉えられる。
黒の服を身に纏っているあの男には見覚えがあった。なるほど、かの組織においていまだにネームレスの狙撃手だ。コルンやキャンティと比較してかなり腕は劣る。
しかし、例の組織が怪盗キッドを狙っているとはどういうことだ
新たな疑念が浮かぶ中、俺はまず、手短にジェイムズに連絡を取った。
次にコナンくんに電話をかける。
「ボウヤ――ああ、今日のところはお互いに時間がないのでその話はまた後で」
一言目にAと同行していることに食いついてくるが、君だってたいていいつも『蘭ねーちゃん』と同行してるじゃないか。
「ところで、今日の君のターゲットを変更した方が良さそうですよ。いえ、冗談ではありません。――今どこに居ますか? そこから下を見て欲しいんですが。〇〇池、わかります? そこに1人、人が忍んでいます。警察関係者であればいいのですが、おそらくは違うかと。くれぐれも相手に気取られないように」
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作者名:まつり | 作成日時:2022年11月8日 10時