秘密の共有11 ページ39
「Kitty、そちらに目をやらずに静かに聞いて欲しいんだが、10時の方向に見える池周りの茂みにライフルをもって潜入しているものがいる――。彼(Kid)を守りたいなら協力して欲しい。君に車の運転を任せたいのだが、構わない?」耳元で囁かれた言葉は英語だった。
「Yes,of course(ええ、もちろん)」
「もう少し近づいて詳細を確認した後に各所に報告したいので、君は車で待っていて」
「キッド君に電話してあげてもいい?」時刻は11時半を過ぎたところで、今更電話に出てくれるかどうか自信はない。
「いや、勘違いの可能性もある。少し待っていて。必ず報告するから」
沖矢さんはわざわざ私の瞳を覗き込むと
「君を信じてる。協力してくれますね?」ととても真剣な口調で言った。
「協力できないというなら、別行動せずにこのまま公園を去る」
沖矢さんの最優先事項は私の身の安全だ――と暗に伝えてくる。
だから、これから別行動をする私が他のこと(例えば心配のあまり美術館に戻ってキッドの元へ向かうとか、こっそり沖矢さんの後をつけるとか)をするくらいなら、別行動をすることなくここから去る、そう言っているのだ。
そもそも、沖矢さんにキッドを守る義理などない。
「わかった。私はここから最短距離で車に向かってエンジンをかけておくし、運転席に座っておく。他のことは何もしない。走った方がいい?」
「いや、徒歩で十分だ。Good Kitty.I trust you.(いい子だ、信頼している)」
そこまで言われて別のことなんてできるはずもない。
そもそも、こんな窮地で赤井秀一が考えること以上の案が私に思い浮かぶはずもなかった。
私は彼がこちらをみているうちに踵を返して駐車場に向かう。
それにしても、いったい誰がキッド君を狙っているの?
警察関係者じゃない……よね?
――さっきまで平和そのものにしか見えなかった公園が、急に危険な場所に思えてきて私は寒気を覚えた。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年11月8日 10時