Who are you?7 ページ1
雨の中ではあれほど熱く感じた沖矢さんの体温が、いまはそれほど熱く感じないことが不思議だった。
熱ってそんなにすぐ下がる? まあでも、シュウは風邪なんて引かなそうだもんね……。
悪化するよりは治った方がもちろんいいので、私はほっと胸をなでおろす。
バニラアイスの後に食べたからか、スコッチブロス(スコットランドのスープ)はとても暖かく感じた。
その味付け方とか煮込み具合とか、やっぱりメアリーの料理に似ていて、親子なんだなぁと不思議に思う。いや、もしかしたら英国の人が作ったらだいたい同じ感じに仕上がるのかもしれないけど。
スコッチブロスなのに、シュウがスコッチではなくバーボンを口にするのはちょっと不思議だ。
「君にはバーボンは飲めないだろう?」
私の視線を感じたのか、シュウは――沖矢さんは、くすりと笑った。
「ねぇ、どうしてシュウになってくれないの?」
「俺ならここに迷わず君を迎えに来るが。降谷君は絶対に来ないと言い切れる?」
「『降谷君』なら明け方まで仕事って言ってたから平気なんじゃないかな」
「もちろん、君が家に帰宅したことを確認できれば、安心して明け方まで仕事ができると思うが」
時計を見れば時刻は20時を過ぎたところだった。
まだ、残業の範囲内だ。
「えー、零もGPSで私の動きを確認しているってこと?」
「君もしてみる?」とシュウが問う。
自信たっぷりにそう問うということはおそらく、GPSへの対策まで万全ということなのだろう。やったところで、それを逆手にとって騙されるだけな気もする。疑いすぎ?
「そうね、それもいいかも。そうしたら今日だって、シュウが私とキッドのことどこからみていたかわかったのに」と私は頬を膨らませた。
「読唇術はずるすぎる」と付け加えれば、「あんなの術でも何でもない、みれば誰でもわかるだろう?」と不思議そうに首を傾げるから、天才の感性はだいぶ違う。
「だいたい、キッド君を巻き込まないであげてよね。子供だよ?」
「俺だって彼が君から素直に手を引いてくれるなら、それでよかった。彼は、手は引かないがお礼にどうしても何かさせろと言われたので、つい……あれこれ」と、肩をすくめる。
「ちょっと待って!そこは何も依頼せずに、手を引くように説得してくれてもいいのでは?」といえば
「それは君と彼との問題だ。邪魔はするが」と、沖矢昴の整った顔に、自信たっぷりな笑みを浮かべて見せた。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年11月8日 10時